Christoph's story 05 "Mad Mercenaries" Update!

【前回までのあらすじ】
判り切っていた事だがミルズシンジケートはクリストフにとって余りにも巨大だった。
クリストフはミルズの構成員を一人でも多く葬る復讐の為にロイと共に、世界的なテロ行為に手を染める傭兵集団、マンシュタインのグループに接触を試みる。




ポンティアックに揺られ、目的の場所に着いた。
ボロい車だが、足としては十分だった。

『ロバの方がまだマシだ』

ロイは最初から最後まで、この世の呪詛のすべてを吐き続けていた。
ラジオは壊れていたが、おかげで退屈もしなかった。
この男は、何か人をひきつける魅力があった。
そう、かの男のように。

マンシュタイン。地獄のような戦場で、泥水を啜り草を食って戦い続けた戦場で、奴は常に楽しそうに笑っていた。
包囲戦の飢餓との戦いの中。敗走し未開の密林を走る最中。
いつしか仲間が集い、それは大きな牽引力を持って多くの人を死地へと届ける戦いを続けていった。

殺し合い。殺し殺され、戦いを続ける。平等な世界。奪い奪われ、戦いを続ける。

あの男の口癖だった。楽しそうに語った。あの男にもう一度会えるのだろうか?

「あの建物だ。これ以上近づくのはまずい。双眼鏡も使うな。携帯もだ」
『もう警戒網に入ってるって事か?』
「そういう事。男二人連れで、ゲイの新婚旅行だなんて思ってくれる市警がいるか?」

ロイは広げたタブロイドに目を落とす振りをしつつ、辺りに目をやる。

『じゃ降りろ。俺の車だ』
「冗談が通じないなぁアンタは。流せよ、こういうのは。だが警戒網にはもうずっぽりと入ってる。もうチェックされてるよ」

この男の有能さは、随所に発揮されていた。目配せを受けミラーに目をやる。

「三台後ろのベンツ。さっきから尾行してる。そろそろ代車が変わる頃だ」
『何故解る?』
「あんたが何故解らないのか、それが不思議だ。ミルズに建て付こうってのはシャレだったのか?」

グラサンの向こうに、いたずらっ子のような輝きをたたえた眼差しで見つめる。
憎めない奴だ。

「腹ごなししてから、現地に行こう。多分、今日には動きがある」
『情報か?』
「そう。ここ。ペスター氏、503号室ジョセフに連絡請う」
『暗号か』
「そう。前の情報を買った奴は至急連絡よこせって事さ。さぁ、あのレストランでいい」

電話に小銭を入れ、電話をかけるロイを後ろに、俺はシートに腰掛けた。
店の中を見渡すが、特にまずい事はなさそうだ。
誰も携帯していない。この店に敵はいない。勘と経験。説明できないがそういった感覚が培われている。

しくじった。

まずロイが発砲した。
中々大した手妻だ。しかも躊躇しなかった。それは褒めてやってもいい。

俺の横では、中年の女がバックからグロックを取り出していた。
俺の動きに遅滞はない。女が血を吹き上げもんどりうって倒れる。

ウェイターが腰だめでライフルを持ち出してきた。ロイが俺に目配せする。
俺かあいつか。人一人殺すのに、弾は二つ、二人がかりの必要はない。
俺が担当した。5.56mmの破壊力も、当たらなければ、撃たせなければどうという事はない。

ロイがスピードローダーで装填する間、俺がカバーをした。
ロイが撃ち始め、俺はローダーで装填した。

特に打ち合わせた訳でもないが、息があう(タナカのリボルバーなので、カートはないが、気分でw12発いれて6発撃ったらスイングアウトしている)。

『何が起こってる?』
「この店は、ミルズの出先機関だ。そして俺もあんたも顔が売れすぎていた。早とちりしたバカが銃を抜いたっ」
『 俺たちが店を襲撃してるようにしか見えないが』
「同感だっだが『撃退された強盗の死体』として処理されんのと『銃撃の末逃げた強盗』の、あんたどっちが好みだっ?」

このままでは、この界隈にごまんと潜む市警が集まりだす。俺たちは退散する事にした。

ポンティアックに駆け込み、ホイルスピンしながら走り出す。
さすがに店の外まで銃撃はしてこないようだ。

俺たちは逃げおおせた。警察の警戒線が作られるまでに、俺たちは身の振りを考えなければならない。車を捨て、逃げおおせるか、留まるか。

ランクルが並走して走っている。厭な感じは・・・しない。
マグライトが点滅している。
モールスだ。『目開いて注意し考えろ』

『やばくねぇかっ?!やっちまうかっ』
「・・・お前の目当ての奴等だよ。事を構えたいなら止めないがな」

モールスの意味。俺たちの合言葉だった。
マンシュタイン。奴もあの店を張っていたわけだ。

そして、そんな店にしけ込んだ間抜けが誰かも、気が付いた。
ロイは、間抜けの大バカだ。

廃業してもう長いであろうドライブイン。そこが
彼らの合流地点だった。

「フヒィヒィ!久しぶりだな」
『そうだな』
「噂は聞いてたぁ。いずれ現れるだろうと思ってた」

暗がりに灯るコールマンのランタン。背後に伸びる影は長く、暗い。
幾度となく続いた戦いにより、人数は随分減っていた。
だが誰一人として、疲れたようでも上官に反感を持っているようでもない。
この男の狂気が、魂を絡め取っているのだ。もう、地獄に続く路を進むのみ。

ロイはもう自分を売り込んでいた。まったく物怖じしていない。
まぁいろいろな意味で、合うだろう。

「信用できるのか?」
『・・・まぁな』
「もっと推してくれよ」

マンシュタインは来るものを拒まない。死出の旅路は多いほうが楽しいからだ。

「いっとくが、俺たちもジリ貧だぞぉ?このままじゃ死ぬだけだ」
『ケツまくって逃げないのか?』
「国境を越えられるとでも思ってるのかぁ?市警に1万発は撃ってるんだぜぇ」

困惑した顔で目配せするロイ。俺は肩をすくめるだけだった。
俺は、ミルズを一人でも多く手向けに送る。それだけだった。先は考えていない。
長く永らえたいなら、回れ右して出て行くべきだ。
背後から撃たれたとしても、それも運命だろう。

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燃え上がるモーテル。
建物が、樹木が。そして人が燃えて落ちていく。
暗雲を照らす炎。命を糧に燃え上がる炎。

ミルズの襲撃は的確かつ、冷酷だった。
許容もなく、慈悲もなく。

だが、燃え上がり天に舞った火の粉はミルズと警備会社は、半々だったといってもいい。

もうすぐ市警が来るだろう。このところの災禍の中ではまぁ小さいほうだと言っていい。
だが、これだけの銃撃戦が行われたのだ。

「どうするよ?」
「運命を共にしたいなら、いればいい」

俺もロイも、それなりの数をこなしていた。

モーテルの炎が天を焦がす。俺の中の炎はこんなに赤くはない。黒いといってもいい。
熱く猛るМ−29の焼け付くバレル。

マンシュタインとははぐれた。だが、最後にニヤリと笑っていた。
袂を分かつ事となったが、まずは俺の目的は果たした。
マンシュタインとは、また会う事になるだろう。
地獄の煉獄の中で。

「車を出す。もうここには獲物はいない」

「どうする?」

助手席で流れる景色に目をやりつつロイ。
ロイにしてみれば、余計な罪状を重ねたというところだろう。

「俺の予定は変わらない」
「俺の予定は番狂わせだ」
「ここで降りるか?それでもいいぞ」

一瞬考え込むロイ。寄る辺がとんだ災厄の場だった。
そして、俺と同行する事のリスクを考えているのだろう。

「・・・M29。まだ使っていたんだな」

市警の頃はいつも吊っていた。今も結局こいつを使う事になった。
「ああ。やりやすい」
「知ってたか?ダーティ・ハリーは人を撃つために弱装弾を
使っていたんだ」
「・・・知らなかった」

吹き出すロイ。別に、ダーティ・ハリーに憧れていた訳じゃない。
「手首は大丈夫?」
「ああ。少しひねったかも知れん」
「今後を考えるなら、あの357か弱装弾を使う事を薦めるよ」

大量にホークアイから買った弾がある。そうもいかない。
「まぁ、ラバーグリップをつけてる辺りは気が利いてるね」
「・・・・」

星明りが照らす一本道を、俺たちは走った。腐れ縁か。まぁ、暇はしない。


 Photo  やさぐれ刑事のM29

 Photo  やさぐれ刑事のM29とM13FBI

 Photo   やさぐれ刑事が捨てたバッジ