Christoph's story 03 "Endress song" Update!

【前回までのあらすじ】
ミルズのバウンサーを処刑してシンジケートへ宣戦布告をしたクリストフ。
44マグナム弾で足が付きミルズと警察の両方に追われる事を避ける為、357マグナム銃を入手すべくクリストフはかつての傭兵"ホークアイ" ダイソンの銃器店を訪れる。





『終わらない歌を唄おう くそったれの世界のため
終わらない歌を唄おう すべてのクズどものために
終わらない歌を唄おう 僕や君や彼らのため
終わらない歌を唄おう 明日には笑えるように』

カーラジオから、流れる曲に耳を傾ける。
明日には笑えるように・・・か。

もう笑わなくなってどれほど過ぎるだろう。まだ始まったばかりだ。
終わりの始まり。俺の終焉はまだ先にあるのか、明日か。

傷つき閉ざされた友を救う術も持たず、手は届かなかった。
病に倒れた友に、かけるべき優しい言葉も持ち得なかった。
救えるはずの命を、未来を俺は自分の規範によって閉ざしてしまった。

『終わらない歌を唄おう 一人ぼっちで泣いた夜
終わらない歌を唄おう キチガイ扱いされた日々』

俺は災厄をもたらす存在だったらしい。
だが、俺にだったらどうしろというんだ。俺は自分のすべき事をしてきた。
家庭を省みず、仕事に没頭した。仕事では踏み込むべき領域に踏み込んだ。

『馴れ合いは好きじゃないから 誤解されてもしょうがない
それでも僕は君の事 いつだって思い出すだろう』

忘れるはずがない。いまわの際まで持っていく。

わかっていた。それを正さなかったのは俺の驕りだったのかも知れない。

今更、もう取り返しは付かない。もう、終わったことだ。

『終わらない歌を唄おう くそったれの世界のため
終わらない歌を唄おう すべてのクズどものために』

一軒の店の前に乗りつけた。ここならいいだろう。
ここの店主はやや、訳ありだが・・・その方がいい。

「いらっしゃ・・・なんの用だ?」
『銃を一丁用意して欲しい。ホークアイ』

「・・・ダイソンだ。俺はもう過去は捨てた。何が目当てだ?金か市警」
『市警は辞めた。だが、いろいろと訳ありなんだ』

「・・・俺が垂れ込んだらどうする?」
『俺も垂れ込む。イーグルワンはお前との再会を随分楽しみにしてたぜ?』
「・・・くたばれ」

俺は市警の頃、強請りたかりはした事がなかった。それはバッチにかけて誓える。
だが、今はなりふり構っても居られなかった。
切り札として切るには、やや早いカードだったかも知れない。
ライフリングが未登録のリボルバー。今後も続ける戦いには必要だった。

弱みに付け込む。汚いやり方だ。

「何が欲しい?・・・・リボルバー、ライフリング未登録。だろ?」
『そうだ』
「俺を巻き込むな市警。俺はこの生活が気に入ってるんだ」
『今後は関わらない。約束してやる』
「アイリーンの店にでもいきゃあいいものを・・・」

あの店で銃が買えるのは、よほどの変わり者だけだ。

俺もホークアイも、疲れを頬に刻んだ顔で、向かい合った。
奴も、いろいろとあるらしい。

「今はこれしかない。これでいいな?」

М13。いいだろう。357なら、足を追われる事もない。
F.B.I..仕様だが、採用後コマーシャルモデルは多く出回った。

「今時リボルバーとはな」
『血塗れの鷹としては、不満か?』
「・・・支払い?カードはお断りだ」

44マグナムを使うのはいささか危険だ。俺だと喧伝して歩いたとして、
市警に捕まるのが先かミルズに処理されるのが先か。

どっちに転んでも俺は終わりだが、先延ばしできるなら一日でも先に。
一人でも多く道連れに。手向けの灯明に灯す。

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 俺のヤサは寂れたモーテル。
振り込まれた退職金はそれなりだが、まずは温存しておきたい。
何より、この先どこまで戦えるか、灯明を灯せるかわからないが先立つ物は必要だと思っていた。

だが、張り詰めてばかりもいられない。
俺はパブで一杯やっていた。

ロックアイスを浮かべたバーボン(本当にバーボンw)
ジュークボックスから流れるレフトアローン。

店内に客はまばら。俺はひとしきり見渡せる席に座っていた。

疲れた。少しだけ、そんな気持ちがよぎる。
張り詰めた日々。ただ走り続ける、贖罪の日々。

仕事に追われた頃は思い出しもしなかった、いろいろな事柄が頭をよぎる。
彼女は、俺を愛してくれていた。仕事に埋没する俺を励まし、慰めてくれた。

差し伸べられた手を振り払ったのは、俺だったのかも知れない。
おろかな自己憐憫と、目先の仕事を処理していくルーチンワークにはまり込んで。

もう、贖罪も届かない。願いは届かない。自分を哀れむ心はなかった。
もうそんな感情はとうになくなった。
ただ、苦しめばいい。それこそが贖罪。

「一杯・・・奢らせてもらえませんか?」

見慣れぬ男が、ボックスシートからやってきた。この男は肩から吊っている。
入ったときから、チェックしていた。恐らく・・・ミルズのアサシン。

「最近、いろいろとついていなくて。お話したい相手をさがしていたのです」
『・・・それが俺?』
「ええ。愚痴らせてください」

身なりは上等。仕立てのいいスーツに、輝く腕時計。カフスのセンスはいまひとつ。

『・・・いいだろう』
俺の右側に腰掛ける。だが、この場で抜くとは思えない。
これは警告の一環だ。俺の勘がそう、告げていた。

俺は左利きだ。右側に座るアドバンテージは、ない。

「・・・最近、部下がしくじりまして。ええ、私が管轄している部門でひとくさりありましてね」

男はグラスの氷を遊ばせながら、頬に刻んだ笑みもそのままに語り始める。
グラスを持つ手は左。右手はカウンターにかけているが、懐までは一握り。
俺を試すかのようなポジションを取る。

「私どもは誠意を尽くしているつもりなのですが・・・先鋒はどうもご理解いただけないのです」
『・・・見解の相違だろう。相容れない立場というのもある』

氷がさめた音を立てる。男は無言。頬を刻む笑みはそのままだが、隠し切れない匂いが強くなる。
血と、硝煙が染みついた特有の匂い。

「とても残念に思っているのです。私どもはとある人物の存在を慮っているのです」
『リードマン』


中尉に俺が頼るとでも思っているのか。

俺はもう、寄る辺なき身だ。この身を焦がす炎は、貴様らが燃え尽きる灯明で贖わせる。そして俺も燃え尽きる。
中尉には世話になった。イナーク、ふと奴の顔がよぎった。
そしてマンシュタイン。彼らは、元気でやっているだろうか。

「私どもはあくまでビシネスとして、事業を推進しています。問題があった場合の
謝意は十分に尽くしているのですが・・・」

封筒に詰められた15万ドル。もう燃えて灰になっていた。

『伝えてやりたい事が俺にもある。きいてくれるか?』
「・・・ええ。何でしょう?」

『一人でも多く、手向けに送る』

研ぎ澄まされる空気。懐かしい世界。時間は秒単位で展開し、コンマの世界で勝敗が決する。アドレナリンが流れ、俺は懐のМ13の銃把に手を滑らせた。

「よう、元気でやってるかい?」

二人を包む世界は、決壊した。この男が、それを霧散させた。

「・・・私は、これで」

ミルズのアサシンは、かの男を一瞥するとそそくさと席をはずした。

『・・・なんの用だ?』
「つれないな。今度飲もうっていったじゃないか」

この男は、まだミルズも計りかねる部分が多い。
俺も何度か、作戦を共にしたが今ひとつ掴みかねていた。

俺と関わってもいい事なんかないぞ』
「そうかい?俺は何時だっていい事なんかないがな。最近は散々さ」

肩に余計な力が入っていたと、感じ始めた。俺はあのままなら、銃を
抜き損ねたかも知れない。ロートルになった。

鈍ったものだ。

『・・・借りにはしないぞ』
「まあ、いいさ」

バーボンを満たしたグラスを突き出すこの男に、俺はグラスを合わせた。
たまにはこんな日があったっていい。

ミルズは俺を突き止めた。だが、俺の望むところだった。
肩の力の抜き方は、今思い出した。

俺の錆付いた腕が、少しづつ動き出していく。

 Photo  やさぐれ刑事のM29

 Photo  やさぐれ刑事のM29とM13FBI

 Photo   やさぐれ刑事が捨てたバッジ