Inerk's story 87 "The Trap"

【前回までのあらすじ】
市警のSWATに戻ったイナークは都市凶悪犯罪課の依頼を受けて武器麻薬密売組織の撲滅に参加し、チームはかつてない活躍で組織構成員の大半の逮捕に成功した。
戦場での心の傷が癒えぬまま市警の勤務に没頭するイナーク。
そんなイナークに再びMr.ホワイトの陰謀が静かに迫りつつあった。




俺の名はイナーク。市警のSWATでチームリーダーを務めている。

ラスベガスで発生した911以来の大規模なテロ。
メキシコで発生した軍事クーデターによる内戦。
ロシアで発生した軍事クーデターによる内戦。
中東のカタールで発生した核爆弾によるテロ。

世界情勢は冷戦時代よりもある意味悪化しつつある。

RainbowチームやGhostチーム、SASらの活躍で紛争は一応の収拾を見た。
しかし米国内のテロや凶悪犯罪との闘いは絶える事無く続く。

俺は市警に復帰早々、都市凶悪犯罪課のグレン警部の依頼で武器と麻薬密輸組織の取引現場を強襲。
潜入捜査官のClark Jennings捜査官を無事確保。
容疑者15名の内、4名を射殺。重傷2名。逮捕9名と我々のエレメントとしては異例の逮捕率で任務を完了した。

エレメントチームのメンバーは、久々の俺の指揮が衰える事無く迅速に事件を解決できた事に安堵したようだ。
だが俺は忘れていたキノコ雲の幻覚にまた見舞われてしまったのだった。

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「どうかね。彼の様子は?」

ロックポート市の警察署長のトゥエイン署長、実はミルズ有数の幹部の1人、Mr.ホワイトが
グレン警部に尋ねる。

「恐ろしく優秀です。例の不正規軍事活動の内容は不明ですが、復帰後の任務では
  過去最高のパフォーマンスを示しています」

とグレン警部。

「ふむ。それでは不測の事態における彼の対応能力のテストをしてみようじゃないか。
  その結果次第で我々の次のプロジェクトの実験体に使用しよう」

「判りました。お膳立てはお任せ下さい。」
そう言うとグレン警部はトゥエイン署長のオフィスを後にした。

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SWATの勤務に復帰してから2週間。
例の密輸組織の強襲作戦を除けば安穏とした日々を俺とチームメンバーは過ごしていた。

SWATチームエレメントの増設で、シフトが楽になったのも一因だが何より凶悪犯罪よりも精神疾患患者の立て篭もりといった比較的危険度が低い出動が多かったからだ。

「イナークリーダー。隊長がお呼びですよ」
メンバーのジャクソンが待機室でTVを見ていた俺に声を掛ける。

隊長が直接俺に声を掛けずに呼びつける時は来客に決まっている。誰だろう?
俺は制服のネクタイを正して隊長室に向かう。

『失礼します』
ノックして隊長室に入った俺を迎えたのは、SWATの隊長と都市凶悪犯罪課のケヴィン捜査官..
いや今はグレン警部の昇進でケヴィン警部補だ。

「久しぶりだね。イナーク。あの事件の時には君に命を助けられた。今でも感謝してるよ」

『いえ。大事に至らず何よりでした』

SWATの隊長が外交辞令のやり取りから本題に入る。
「イナーク。単刀直入に言う。都市凶悪犯罪課の新人訓練に協力してやってくれ」

『新人の訓練ですか?どうも私向きの仕事では無いと思いますが』

俺は困惑気味に隊長とケヴィン警部補の顔を交互に見る。

隊長の言葉を引き継ぐようにケヴィン警部補が口を開く。

「志願者から選抜され、基礎訓練は完了した連中です。だが特殊な状況下での実戦的な
  訓練の経験に乏しい。そこでSWATで恒例の模擬戦を実施したいと思いまして。」

『実戦的な模擬戦...ですか?』
別にSWATに依頼しなくても都市凶悪犯罪課なら自前で用意できる訓練のはずだが...

「グレン警部がロックポート市に出張中なので、この訓練は全権を私が任されています。
  訓練の場所は廃病院で、ウチの新人達には負傷したVIPの護衛任務。イナーク巡査長
  にはテロリストに拉致されたVIPの救出任務として参加して貰います」

『双方が善玉のカウボーイって訳ですか?』

「武器は双方とも実銃にシムニッション(ペイント弾)を使用します。ウチの新人は12人。
  民間人に扮した負傷者が数名と、目標のVIPを廃病院に配して襲撃に備えます」

「あなたは負傷しているVIPを病院から救出するか、ウチの新人を全員戦闘不能にす
  れば任務成功です。ウチの新人はあなたのVIP奪取を阻止できれば合格と言う訳です」

ケヴィン警部補は淀みなく訓練の要旨を説明して、俺とSWAT隊長の顔を見る。

「どうだイナーク。幸い今はSWAT勤務も落ち着いている事だし、一つ協力してやって
  貰えんか?」
と隊長。

『私が不在中にチームの面倒を見て頂いた隊長の依頼では断れませんね。
  それでは日時と場所は?』

「感謝しますよ。イナーク巡査長。日時は明日午前4時から。西ブロックの廃病院、
  旧聖ミカエル病院で訓練を開始します。実際の突入時間はイナーク巡査長の判断にお任せします」

『判りました。装備はSWATの物で良いんですね?』

「いえ。リアリティを出す為に先日密輸組織から押収した防弾ベストやプロテクターを着けて
 貰います。銃はご自分の物で結構ですが、シムニッションの在庫の関係で9mm仕様の銃で
  お願いします」


ケヴィン警部補は俺と隊長と握手してにこやかに隊長室から去った。

隊長は俺に向き直り苦笑いしながら話す。
「まあ、都市凶悪犯罪課とはうまくやっていかんとな。悪いが宜しく頼むぞイナーク」

『了解しました。恥を掻かないように頑張ります』
俺は敬礼して隊長室を後にした。

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翌日...俺は午前2時に聖ミカエル廃病院の中庭に潜んでいた。
だが意外な事に、すでに病院内に全てのキャストは揃っていたようだ。

装備をチェック。
SWATの装備に比べると薄っぺらい抗弾ベスト
シムニッションはペイント弾とは言え、火薬で硬質のペイントカプセルを発射する。
もちろん貫通はしないだろうがこのベストはいささかお粗末過ぎる。
当たれば相当痛いだろう。
予備マガジンの携行用にしか役に立たない。

与えられたシムニッションのマガジンは17発装弾のロングマガジン5個。
ライト付きのGlock17に装填する。

病院の周囲にはパトロールはいない。屋内戦の訓練の為か?
監視カメラを避けつつ病院の裏口に取り付く。
監視はいない。裏口から病院の1Fへ...病院の構造は1FとB1Fの2階構造だ。

荒れ果てたロビーに出る。
民間人の負傷者役の数名が倒れてうめいている...迫真の演技って奴だな。
俺は手前のブースから順にクリアリングして行く。

ロビーに近い薬局の中に入り込み、診療室に続く出口のドアの向こうを伺う。
いた。Policeの派手な黄色のロゴが入った青の上下ジャージにベースボールCAP。
都市凶悪犯罪課のルーキーだ。

『武器を捨てろ!』
俺は半開きのドア越しに警告するが、彼は動揺しておろおろするばかりで銃を手放さない。

「パンパン!」 俺はGlock17から模擬弾のシムニッションを彼の右腕に撃ち込む。
悲鳴を上げる訓練生。
だが銃を手放そうとはしない。ルールではペイント弾の着弾と共に負傷あるいは死亡として銃を捨て、訓練から除外されるはずなのだが...

「パンパンパンパン!」おれは彼の右腕にシムニッションの模擬弾をさらに叩き込んだ
彼は痛みから遂に銃を取り落とす。

俺は彼に歩み寄り、ハンドカフで拘束する。そして彼の銃を....
このTLE/IIには実弾が装填されている!!

俺は自分が何かの罠に放り込まれた事を直感的に悟った。
だが訓練生の彼らはその物腰から見ても明らかに本物の新人警察官だ
事情はどうあれ俺が実弾を使う訳にはいかない。

無線で訓練中止を呼び掛けるのは簡単だが、現時点では誰が羊で誰が山羊だか判らない。
ケヴィン警部補のお膳立てなら彼がこの企みの首謀者の可能性もある。
俺は模擬弾で廃病院の制圧をする覚悟を決めた。

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ここでページ右上のMediaPlayerにてSWAT4のPlay動画をご覧ください。
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俺は実弾装備の都市凶悪犯罪課のルーキー達12人を、Glock17のシムニッション模擬弾の連射で無力化
至近距離からのシムニッション弾の直撃で酷い打撲を受けた訓練生もいたが、幸いな事に大事には至らなかった。

模擬弾を撃ち込まれてもひるまずにTLE/IIの.45AUTOで反撃してきた訓練生の1人に俺は左腕にかすり傷を負わされたが大した傷じゃない。

VIPは無事に確保。
驚いた事にそのVIPは記憶喪失中の元武器密売組織のリーダー、ガルシアフランシスコペタスだった。

都市凶悪犯罪課のルーキー達は、ミルズによるガルシアフランシスコペタス襲撃の情報から極秘任務として警護を命じられ、病院を襲う暗殺者の排除を指示されていた。
彼らにとっては俺イナークは、ミルズが送り込んだ暗殺者だったのだ。

倒れていた民間人は本当に負傷していた。
俺が侵入する前にミルズの構成員が第一波の襲撃を病院に仕掛け、その後を俺が引き継いでしまったらしい。

危うく警官同士で殺し合いを演じる所だった。
俺を殺させる為の罠だったのか、それとも反撃させて警官殺しに仕立てる為に未熟な訓練生を警備に充てたのか?

事の顛末を知るはずのケヴィン警部補はこの早朝から行方不明になっていた。
やはり彼が今回の罠の首謀者だったのだろうか。

俺は陰鬱な気持ちで聖ミカエル病院を後にした。

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「ふむ。やはり生き残ったか」
Mr.ホワイトがグレン警部の報告に笑みを漏らす。

「ケヴィンには身を隠させました。我々と今回の事件を結ぶ糸はありません」
とグレン警部。

「ミュラー博士。どうやら次のプロジェクトの被検体は彼で決まりだな。
  メカイーグルワン計画の監視と平行してバイオイナーク計画を即刻開始
   してくれたまえ。彼を兵士として量産すれば素晴らしいビジネスになる」

「判りました。Mr.ホワイト。」
 ミュラー博士は電子機器の操作の手を休める事無く背を向けたまま応える。

陰謀は暗くそして深い。

 Movie   The Trap

 Photo

  市警制服とバッジ


 Photo  Glock17 3rd Gen

 Photo  Glock17 3rd Gen

 Photo

  ホルスターと3マガジン、無線、手錠装備


 Photo   イナークに与えられた粗悪な抗弾ベスト

 Photo   負傷した民間人

 Photo   照明が落ちた廃病院内をクリアリング

 Photo   実弾武装の都市凶悪犯罪課の訓練生

 Photo   模擬弾の連射で訓練生の右腕を狙う

 Photo   訓練生の実弾を装填したTLE/II

 Photo   模擬弾の連射に昏倒する訓練生

 Photo   警告に降伏する訓練生

 Photo   確保したVIP ガルシアフランシスコペタス

 Photo   バイオイナークの遺伝子サンプル