Inerk's story 42 "Traffic cop Inerk"

【前回までのあらすじ】
ミシガンの森林にある友人の山荘で静かなバケーションを楽しんでいたイナーク。
しかし隣のコテージに現金輸送車襲撃犯達が逃げ込んだ為、予期せぬ銃撃戦に巻き込まれた。
その犯人の一人を背後から撃った為、管轄外での警察行為が審問会に掛けられる事になった。
イナークは審問会までの数日間SWATを離れ、パトロールカーで交通警官として市内の巡回を命じられる。




俺の名はイナーク。市警のSWATでチームリーダーを務めている。

俺はミシガンの森林地帯で久々の休暇を静かに過ごした。
しかし最後の日になって友人ケリーからM629を借りて、隣のコテージに逃げ込んだ6人の現金輸送車襲撃犯達と渡り合う羽目になった。

結果は1名を逮捕。2名に重傷を負わせ、3名を射殺。
交戦時間は約2分間。
幸いこちらは無傷だった。

ケリーのCB無線による通報で駆けつけた地元の警察は俺の身分を確認し、簡単な質問の後早々に解放してくれた。
本音を言えば早く厄介払いをしたかったのだろう。
警察組織はメンツを重んじる。
管轄外の他州の警察官にニュースで持ちきりの現金輸送車襲撃犯を一掃されたとあっては彼らも立場が無い。

俺は、警官と共に無事別荘に戻ったケリーに別れの挨拶を告げ、一路帰宅の途に着いた。
長い退屈な旅路の後、帰宅した翌日に勤務へ復帰した俺を、意外な展開が待ち受けていた。

「イナーク。又大変な事をやらかしてくれたな」
出勤して開口一番、隊長が恐ろしく怖い顔をして睨む。

『や、やだなぁ隊長。そんな怖い顔をして。ミシガンの件なら不可抗力ですよ。不可抗力』
俺は待機室の他のSWAT隊員達の顔を見回すが、助け舟はどこからも出ない。
彼らは慌てて視線を思い思いの方向へ逸らし、俺の巻き添えを避ける策に出た。

「不可抗力?地元警察を差し置いて単身強盗犯のアジトに乗り込んで、犯人達に44マグナム弾を叩き込んで回るのが不可抗力なら警察も検察も裁判所も軍隊もいらん!! 大体、お前何で9mmじゃなく44マグナムなんか持ってたんだ?」

『はあ。M92FSは車のダッシュボードに入れたままだったんで、別荘の友人から護身用のM629を借りまして』

「護身用?ミシガンの別荘地にはそんなに良く熊でも出るのか!!」

『秋とか春なら出てきそうな気が...いえ。何でもありません!!』

つい余計な俺の一言で隊長の眉毛がさらに吊り上る。

「まあいい。今上層部で問題になっているのはお前が重傷を負わせた犯人の一人の件だ。両手を挙げて投降の意思を示したのに、お前が背中から撃ったと弁護士がミシガンの地元警察にねじ込んでるそうだ」

『とんでもない嘘ですよ。奴は確かに背を見せていましたが体をひねって左脇から撃とうと銃を向けて来たんです。奴の銃はその場で地元警察が押収してます。発砲前に撃ち倒しましたから、発射残渣はないでしょうが奴の手のひらに銃のグリップ後端の金属反応が残ってる筈です』


あの強盗め...頭を撃ってやれば良かった。

「まあ地元警察もそいつの言い分を鵜呑みにするつもりはないらしいが、弁護士がお前の過剰発砲を訴えているから厄介な事になる。査問委員会が開かれるそうだ」 と隊長。

『査問委員会?するとそれまで停職で自宅謹慎ですか?』

「いや。お前から目を離すと又姿を消したりどこぞでトリガーハッピーな事件を起こしかねん。俺の目が届く範囲に居て貰う」
ニヤリと笑う隊長。嫌な予感が...

『ひょっとして隊長付きでデスクワークとか?』 それは拷問。いや生き地獄。

「イナーク。今日から査問委員会までウチの市警交通課でパトロールを命じる。交通課のスティルマン警部にはもう話を通した。お前を待ってるから早く行け 」

『たいちょー...』

「たまには凶悪犯罪以外の地道な警察活動を経験して来い。以上だ」


ここまで話が出来上がっているなら何を言っても始まらない。
俺はおとなしく隊長に敬礼して待機室を出る。
他のSWAT隊員達、とりわけ俺のチームの部下達は同情的な視線で俺を見送る。

俺は交通課を訪れ、スティルマン警部に挨拶の後、制服の上に羽織るジャケット無線等、そしてGlock17を受け取って装備を揃えて地下の駐車場へ向かった。
Glock17は9mmパラベラム。SWATで使い慣れたKimber SWAT Custom 45AUTOに比べると少々頼りない気もするが悪い銃じゃない。

駐車場では今日から査問委員会の日まで、俺のパトロール勤務の相棒にされたコノリー巡査が市警のPoliceCar、チャーリー88で待っていた。

「イナーク巡査長。よろしくお願いします」
とコノリー巡査。
確か勤務2年目。本心は判らないが俺との勤務をそう迷惑には思っていないように見える。

『こちらこそ宜しく頼むよ。 パトロールカーでの巡回任務は研修の時以来だ。色々判らない事もあるから頼りにしている』

「任せてください。その代わり、ミシガンでの武勇伝を聞かせて下さいよ」
とニッコリ笑う。いい奴だ。

俺とコノリー巡査はチャーリー88に乗り込み地下駐車場を後にして街へ出た。

先日来のテロ騒ぎが嘘のように平和な街を、何と言う事も無くチャーリー88で巡回する。
コノリー巡査によれば今日の様に全然無線の呼び出しが掛からない日は珍しいそうだ。

夕刻が迫り、街灯が徐々に燈り始めた頃、無線が俺達を呼び出した。

「こちら本部。チャーリー88応答願います」

「こちらチャーリー88。どうぞ」
コノリー巡査が応答する。

「ウォールナットストリート225番地にコード11-56の容疑者が逃げ込みました。応援願います」
コード11-56は危険人物の乗った車両の追跡だ。

『チャーリー88より本部へ。容疑者の容疑は何だ?』
マイクをコノリー巡査から受け取り本部に確認。

「こちら本部。容疑者は銃器密売容疑です。対応注意願います。以降の指示はウォールナットストリート225番地にて都市凶悪犯罪課のグリン警部補に従って下さい」

『チャーリー88より本部へ。了解。ウォールナットストリート225番地に向かい、グリン警部補の指示を待つ。以上』


俺達はチャーリー88をウォールナットストリートへ走らせた。
現実の警察活動ではこうした場合、TVや映画のようにサイレンやパトライトは使用しない。
容疑者に警察の接近をわざわざ知らせてやる必要は無いからだ。

十数分後にウォールナットストリート225番地に到着した。
すでに1台のPoliceCarが到着しており、都市凶悪犯罪課のグリン警部補の姿もあった。
グリン警部補はスーツ姿の下に防弾チョッキ、他の2名の警官は「POLICE」ロゴ入りの防弾ベストを着用し、全員が赤いレンガ造りの建物に向かって銃を構えている。

「チャーリー88到着しました。指示を願います」 コノリー巡査がグリン警部補に報告。

「ご苦労。この建物が銃の密売屋のアジトになっている。我々が追跡して逃げ込んだ奴も含めて容疑者は10名前後。全員拳銃又は自動小銃で武装している。 ただし潜入捜査官のケビンが奴らと中にいるんだ。 悪い事にどうやらバレちまったらしい。銃声と共に彼の盗聴器の信号がたった今切れた。 ここに向かっている都市凶悪犯罪課の応援が10分後に着き次第突入する」

グリン警部補がテキパキと状況を俺達に伝える。
負傷したと思われる潜入捜査官の生命が危ぶまれる状況だ。
しかし10名以上の自動小銃まで揃えた武装集団相手では、確かに今の5人の警官の拳銃ショットガンではいかんせん戦力不足だ。

俺とコノリー巡査も「POLICE」ロゴ入りの防弾ベストをチャーリー88のトランクから出して着込む。

『SWATに出動要請をされましたか?』 俺はグリン警部補に尋ねる。

「必要ない。これは俺達、都市凶悪犯罪課のヤマだ。お前、確かSWATのイナークだな?応援は感謝するが君らには後方支援に徹して貰う。建物から逃げる奴がいたら逃がすな。勝手な真似をすると後悔するぞ」

『了解しました。警部補殿』
俺は軽く敬礼して返す。
なるほどこの人もか...軍人に多いタイプ。

「イナーク...実は俺、銃撃戦初めてなんです」 コノリー巡査が不安そうに囁く。
『心配するなよ。訓練だと思え。ただし頭はいつも低く下げておけよ』

俺は警部補殿に逆らうつもりはさらさら無かったが、中の潜入捜査官の安否は気に掛かった。
完全武装した都市凶悪犯罪課の応援到着まであと10分。

だがその前に状況が動いた。

「シュパパパパパパパパパパパン!!」

「ぐっ!」 「ぐはっ!」 「うおっ!」
容疑者の一人が我々の死角の建物の裏から出て、まったく気配を感じさせずに建物の右サイドに回り込み、停車したバンの陰からM10で掃射して来たのだ。

まさに油断。秒間18発の速射を誇るサイレンサー付きのM10サブマシンガンの9mm弾の掃射はPoliceCarの陰にいたグリン警部補と2名の部下を側面から襲った。

「畜生!やられた!」 「自分も負傷しました!」


グリン警部補と部下の1名は防弾ベストの側面を9mm弾に突かれて負傷。地面に倒れる。
. 45弾のMAC10なら命は無かった所だ。
もう一人の部下は...運悪く頭部を撃ち抜かれて絶命していた。

俺とコノリー巡査は幸いチャーリー88が盾になって被弾を免れていた。

M10サブマシンガンは速射性こそ優れているが、銃の短さが災いし反動で射撃姿勢の維持が難しい。
25m以上離れたら命中は期待できないと言われる程に集弾率は悪い。
しかしこの容疑者はサイレンサーを付け、それをフォアグリップ代わりに左手で握る事で、銃身の跳ね上がりを抑えて狙撃に近い掃射をサブマシンガンでやってのけた。

『コノリー!無線でEMT(緊急医療チーム)の出動を要請してくれ!』

「こちらチャーリー88より本部!オフィサーズダウン!繰り返すオフィサーズダウン!至急EMTチームを寄こしてくれ!」
コノリー巡査が絶叫に近い声で本部へ報告。

「本部了解。EMTチームを ウォールナットストリート225番地に急行させます」

『コノリー巡査。負傷したグレン警部補ともう一人の面倒を頼む』

俺はM3Super90ショットガンをチャーリー88の助手席から持ち出して背負い、Glock17を構えながら奴の死角を縫うように建物への接近を開始する。

「イナーク!どうする気です?」

『警部補が言ってたろ。 建物から逃げる奴がいたら逃がすなって。命令には従わないとな。君はそこを動くな。2人をEMTが着くまで頼む』


しかしこんな事ならKimber SWAT Customを持ってくるんだった...
一昨日もこんな調子じゃなかったか?まったく...
ヘッドショットを狙うか、9mmの装弾数の多さを生かして連射で倒して行くしかないだろう。

Glock17に装着したタクティカルライトで左の林を照らし伏兵がいないか確認。OK。クリア。
M10の射手から死角になるルートを維持し、建物の窓も警戒しながら走る。

「畜生!来やがった!」 M10の男が叫ぶ。
自らの一撃が多大な戦果を上げたのに気付いていない。好都合だ。
警官隊の総突入と勘違いしたらしい。

「建物に戻れ!戻れ!」 別の男の声が建物から響き、M10の男はバンの影から建物正面のガレージのドアへと走り出した。
建物の壁面に黒いシルエットとなって浮かび上がる。

『警察だ!手を上げて武器を捨てろ!』 距離を一気に詰めて大声で警告。

「ふざけんなポリ公!」
男は振り返ってサイレンサーを付けたM10を構えようと...

「パン!」
日頃の訓練ならではの正確さで反射的に男の右胸を狙ってGlock17のトリガを引く。
軽い反動とスムーズなスライドのブローバック。
男は声も無く9mmパラベラム弾に撃ち抜かれ崩れ折れた。
空薬莢がGlock17から飛び出す。
まず一人。

「奴らをぶっ殺せ!」 建物の中で別の男が叫ぶ声。
ガレージ内をカッティング・パイ。
クリアだ。だがそのままガレージから突入するほど俺も馬鹿じゃない。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名倒した』

「本部了解。EMTチームのトレーラーが間もなく到着します」


さっきの奴が通ってきたのと同じルートを使わせて貰う。
Glock17を構えたまま壁面へ張り付くように走りながら、建物の右サイドに回り込む。
建物の右サイドは無人。白のピックアップトラックの脇を走り抜けてそのまま建物の裏手へ。

建物の裏の壁面には武器密輸業者のアジトには似つかわしくないクリスマス風の電飾。近所へのカモフラージュか?
窓は全て木製の板で目張りされている。

建物の裏口はドアが開け放たれている。
カッティング・パイでリビングルームと思しき室内を索敵。

「こっちにポリ公だ!」
洒落たカクテルバーのカウンターの向こうにベネリM4を持ったグレーの服の男!

『手を上げろ!』 Glock17の照準を奴の頭に重ねて警告。

「糞ったれめ...」
俺の銃が正確に奴の頭を狙っているのを見た男は、捨て台詞を吐きながらもショットガンを床に置き静かに両手を上げる。

静かに残りの室内をカッティング・パイで索敵してクリアを確認。
Glock17を構えたまま、男に素早く近付いて後手にハンドカフを掛ける。

「畜生!もっと緩めてくれ」
『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名逮捕』

男が悲鳴を上げるのに構わず本部へ報告。

「本部了解。捜索を続けて下さい」

豪勢な大型TVの前を通ってリビングルームの出口へ。
廊下に出た。廊下を警戒しながら移動してそれぞれの方向をチェック。
正面のキッチンと食堂はクリア。

右の廊下の奥の部屋には2Fへの階段。左の廊下には扉が二つと地下室への階段がある。

伏兵を警戒しつつ手前の扉をそっと開ける。
コイツはさっきの正面のガレージへの扉だ。ガレージは無人。OK。クリア。

続いて突き当たりのもう一つのドアをチェック。
そっとドアを開ける。中は暗いながらも照明が灯っている。
ここは バスルーム兼トイレだ。
静かに部屋に入り、カッティング・パイでバスルーム内を徐々に視野に入れていく。

サイレンサー付きのM10を持ったグレーのスーツ姿!

『警察だ!床に伏せろ!』
男は従わず銃口を俺に向けようと...

「パン!」
Glock17の9mm弾が男の右肩に喰い込む。
男は一瞬よろめいたが、しゃがんで再び銃口を俺に向けようとする。

「 パン!パン!」
ダブルタップで男の胸と頭に9mmパラを叩き込む。

「うっ!」
男は呻いてそのまま息絶えた。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名射殺』
「了解。任務継続願います」

無線で本部へ容疑者射殺の報告をした俺は、バスルームを出て廊下をチェック。
OK。敵の増援は現れない。

そのまま地下室の階段へ進みゆっくりと階段を下りる。
待ち伏せには絶好の場所だったが連中の姿は無い。
階段の降り口から左右の廊下を伺う。ここもクリア。

地下室の廊下は階段を囲んで口の形に一周する造り。
左周りに廊下を進む。
壊れた冷蔵庫を過ぎた廊下の角。そっと角の先の廊下を伺う。

いた。容疑者だ。銃を持っているかどうかは暗くて距離があるので判らない。

『床に伏せろ!』

お定まりの警告。男は従わず左手に隠れようと移動する。
右手には黒のオートマチック。

足早に廊下を進んで一気に奴との距離を詰める。
金属製の洗濯機の陰に身を潜めて反撃しようとする男。

『手を上げて床に膝を付け!』
男は従わず銃を構えようとする。

「パン!パン!パン!」
速射で3連発Glock17の9mm弾を男の上半身に叩き込む。
1発は洗濯機に弾かれるが後の2発は正確に男を捉える。
崩れ折れる容疑者。

こいつはどういう事だ?連中はまるで統制が取れていない。
武器密輸業者と言っても戦い方は素人同然じゃないか。
スラム街のストリートギャング達の方がよっぽど戦い慣れしている。

だが俺にとっては好都合。
左手の廊下のクリアを確認してから男に歩み寄る。

「うぅぅぅぅぅ...」 男は俺に胸を撃たれて昏倒しているが息はある。
洗濯機の上には男の拳銃が...なんてこった。FN社5-7。
P90と同じ弾を使用し650m/sの弾速でアサルトライフル並の貫通力を誇る。
(ガバメントの.45弾が300m/s前後)
Rainbowでも最近ようやく使い始めた高性能拳銃だ。
こいつで撃たれていたら警察支給の防弾チョッキなど紙のように撃ち抜かれる所だった。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名倒した』

「本部了解。油断しないで下さい」

本部に報告して振り返った俺の視界に壁に背を付けてへたりこんだ状態のスーツ姿の男が目に入る。
胸に銃創。重傷だが生きている!彼が潜入捜査官のケビンに違いない!

『チャーリー88より本部へ。ケビン捜査官を発見。銃で撃たれて負傷している。EMTが到着次第、至急対応願う』

「本部了解。EMTに準備させます」


ケビン捜査官の状態から見て、下手に搬出するよりはこの場所で応急処置をした方が助かる可能性は高い。
突入から約2分。都市凶悪犯罪課の応援とEMTが到着するまではあと8分だ。
その前に連中を片付けてしまえば安全にケビン捜査官の処置をここで出来る。

ケビン捜査官の傍らには、囮捜査で用意した武器の代金と思しき大金が詰まったバッグ。

そのまま左回りに廊下を進み、地下室の最後の部屋のドアに出る。
ドアの前には大きな木箱の山。箱の一つの上には数個のパイプ爆弾が転がっている。
本当にこいつらはプロの武器業者なのか?

最後の部屋のドアにそっと近付いて腰を落とす。
鍵は掛かっていない。銃を構えたまま静かにドアを開ける。

そこには3人が使用できる距離数メートルの射撃..いや試射用のレンジが設けられていた。
男が2人!同時に2人と撃ち合うのは不利だ。

『手を上げろ!』
警告しながら素早く右にスライド。
右の男が壁の陰に入る位置に移動して左の男をGlock17で照準。

「パン!パン!」
しゃがんだ姿勢で銃を構える左の男を9mm弾のダブルタップで撃ち倒す。
男はその場に崩れ折れる。

「銃を捨てた!撃たないでくれ!」

壁の死角の右の男が悲鳴を上げて銃を捨てる。
慎重に室内に足を踏み入れる。
右の男は床に膝を付いて両手を上げて投降の姿勢。

『警察だ!床に伏せて動くな!』
牽制しながら左側の男の状態を確認する。 OK。絶命している。
男が床へ取り落とした銃はFN社製5-7。
どうにも奴らの素性が読めない展開になってきた。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名倒した』

「本部了解。頑張ってください」

本部への報告をしつつ右の男をハンドカフで拘束。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名逮捕』
「本部了解」

着々と容疑者を排除して行く俺の報告に、本部の応答にも少し余裕が出てきたようだ。
突入から3分。EMT到着まではあと7分だ。

シューティングレンジ を制圧した俺は、敵の増援を警戒しながら廊下を再チェック。1周してクリアを確認。階段を登り1Fに戻る。

1Fの廊下を慎重に索敵しながら右手の廊下の奥の部屋、2Fへの階段に向かう。
部屋の角から折り返して登る階段に人の気配。
静かに近付き、気配の方向にGlock17の銃口を向けながら階段に踏み出す。

いた。AK47を構えた容疑者。 だが奴の銃口はあらぬ方向を向いている。

『手を上げて膝を付け!』
俺が向ける銃口を見て男は観念する。

「判った降参だ!撃たないでくれ!」
男はAK47を捨て、両手を上げて階段に膝を付く。
階段の上り口からの増援を警戒しつつ、素早くハンドカフを掛ける。
あと何人だろうか?

「畜生!クソッタレ!」
男が両手首を後手にきつく拘束されて悪態を吐く。
命があるだけ運がいいと思えよ...

『チャーリー88より本部へ。容疑者をまた1名逮捕』
「本部了解。続報を待ちます」

無線で報告をしながら階段をそろそろと登り、上がり口から続く室内を伺う。
無人...いや、パソコンラックの陰に人影!

『直ちに床に伏せろ!』
男は見つかって動揺したのか飛び出して突進してくる。
銃口は向けられていないがその手にはAK47。

「パン!」 俺は至近距離から男の胸板にGlock17の9mm弾を叩き込む。
「うぉぉぉ!」男はそのまま床に崩れ折れた。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名倒した』
「本部了解。続報を待ちます」


部屋のクリアを確認し、続く廊下もカッティング・パイでチェック。OK。クリア。
廊下の先はバリケード状に家具が乱雑に積まれており、 左にドアが一つあるだけ。
どうやらここが終点のようだ。突入から4分。EMT到着まであと6分。

ドアに取り付き右側の壁に張り付く。
鍵が掛かっている!
ブリーチ用のショットガンに持ち替え、鍵に銃口を押し当てトリガを引く。

「ズバーーーン!」大音響と共にドアのノブ周辺が吹っ飛ぶ。
素早く再びGlock17に持ち替えて部屋の中をドアの外から伺う。

何と言う事は無いベッドルームのようだがドアの外からでは部屋の左端しか見る事が出来ない。
素早く部屋に踏み込んで、Gl;ock17を向けながらカッティング・パイのセオリーで部屋の右側を索敵する。

しゃがんでM4A1アサルトライフルを構えた容疑者!
『床に膝を付いて手を上げろ!』

「ドパパン!」 男の返事はM4A1の3点バースト射だった。
近距離にも係わらず、ドアから半身しか踏み込んでいなかったお陰で5.56mm弾は壁を穿っただけ。

「パン!」 俺は正確に奴の頭部にGlock17の照準を合わせてトリガを引いた。
9mmパラベラムの空薬莢が床に落ちた時、男はM4A1を取り落として床に仰向けに倒れこんだ。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名射殺』
本部に報告してドアが開け放たれた続き部屋、もう一つのベッドルームへカッティング・パイで索敵しつつ足を踏み入れる。
「本部了解。任務続行...」

その瞬間、部屋の左側にサイレンサー付きのM10を持った男を視認!
『武器を捨てて手を上げろ!』
「パン!パン!パン!」
男が戸口の俺へ銃口を向けようとするより早く、俺はGlock17の9mm弾の3連射を至近距離から男に叩き込む。
M10を床に落として男はのけぞるように倒れた。 息はあるが瀕死の重傷。

この距離でM10をフルオートで撃たれていたらこっちは確実に死亡だ。
正直、奴が警告に従うかどうか確認せずトリガを引いた。
だがここには査問委員会のお偉方はいない。

「ファッキュー!」 その時、小声で吐き捨てるような罵声!
クローゼットからだ。無意識に口から出たのだろう。隠れている奴がいる。

『チャーリー88より本部へ。容疑者を1名倒した。EMTの手配を頼む』
「本部了解。EMTが到着次第対応させます」

ゴボゴボと喉から噴出す血で咳き込む容疑者を横目に、隠れる男に気付かぬ振りをして本部へ報告する。

そのまま そっとクローゼット内をカッティングパイ。容疑者がFN社5-7を構えようと銃口を上げる!
『警察だ!手を上げろ!』
「畜生!」


「パン!パン!」 Glock17の9mm弾をダブルタップで男に叩き込む。
「ぐわぁぁぁ!」 男はクローゼットの中で絶命する。

「本部よりチャーリー88へ。都市凶悪犯罪課の応援とEMTが現場に到着しました。至急撤収して任務を交代して下さい」

『チャーリー88より本部。了解。今もう一人容疑者を射殺した。おそらく全員片付けたと思う。建物の外に出て後は都市凶悪犯罪課に任せる。EMTにケビン捜査官の治療を優先させてくれ。地下室の廊下に倒れている』

「本部了解。EMTを向かわせます」


俺は時計を見る。突入から約5分。使用弾薬は9mmパラ16発と、ブリーチ用ショットガンシェル1発。
都市凶悪犯罪課の応援とEMTは予定より早く到着してくれたがもう片は付いた。

俺は念の為1F玄関までの経路をクリアリングして建物の外に出た。
建物の外はもう夕闇に包まれていた。
EMTと都市凶悪犯罪課の連中が慌しく建物内に入れ替わりで入って行く。

建物の外で負傷したグレン警部補と部下はコノリー巡査の応急処置のお陰で命に別状は無いようだ。
救急車が2人を病院へ搬送する所。ケビン捜査官も助かればいいが...

コノリー巡査が青ざめた顔で俺を迎える。
「イナーク。心配しましたよ。大丈夫ですか?」

『ああ。警部補の命令通り、一人も逃がさなかったよ』 と笑ってみせる。

しかし俺は判っていた。今回は相手が武器密売のプロで、使う事にかけては素人集団で幸運だったのだ。
黒いゴム製の死体袋で運び出される容疑者達を横目で見ながら、俺はもし連中がハザード・トラヴィスと部下の傭兵連中だったなら、あの死体袋には俺が入っていただろうと考えていた。

だが幸運は戦場で生き延びるには一番大切な才能だ。
願わくばその才能が明日も続くように。

だがその時の俺は、SWATの隊長に今回の件を上手く言い訳をするのには、俺の幸運は必ずしも充分では無いと言う点に思いが至らなかった。

 Movie   Traffic cop Inerk

 Photo

  イナークの市警交通警官制服


 Photo

  イナークの市警交通警官装備


 Photo

  イナークの市警交通警官装備その2


 Photo

  支給されたライト付きGlock17


 Photo

  Glock17その2


 Photo

  Glock17その3


 Photo

  ドアブリーチ用ショットガン


 Photo

  イナーク達のパトロールカーチャーリー88


 Photo

  イナーク達のパトロールカーチャーリー88


 Photo

  チャーリー88のトランクから出した防弾ベスト


 Photo

  イナークのSWAT Custom


 Photo

  容疑者のM4A1アサルトライフル