Inerk's story 08 "The Day of the Rainbow"

【前回までのあらすじ】
日系米国人のイナークは米国陸軍レンジャー、デルタ部隊勤務を経て、NATOの特殊作戦部隊Rainbowに従事していた。
テロリスト達との殺伐した闘い、殺し合いの日々に疲れた彼はRainbow部隊を退役。
超小型核爆弾の幻覚に悩まされながらも、市警のS.W.A.T.のエレメントリーダーとして勤務していた。
狂信的なテロリスト"アメリカ・ナウ"による人質篭城事件に出動したイナークは、過剰攻撃の嫌疑で自宅待機を命じられる。
1993年のソマリアの悪夢や未来のAlienとの闘いにうなされる日々を経て、嫌疑の晴れたイナークはようやく隊に復帰するのであった。




俺の名はイナーク。市警のSWATでチームリーダーを務めている。
先日の『旧グラナイトホテル』人質救出任務での内務監査部の調査が終了し、ようやく隊に復帰となった。

表彰の話もあったようだが昨今のテロや暴動の横行で不満と不安を抱える市民をいたずらに刺激しかねない..との理由で流れた。

復帰からそろそろ一週間になるが幸い大きな出動はなく、せいぜい自殺志願のジャンキーを篭城した自宅から引きずり出す程度。

相変わらず悪夢や幻覚に悩まされてはいるが不思議と任務中には何ともなく、任務完了後に良く幻覚を見る。
『あぁ。またいつもの超小型核爆弾だな』 と数秒意識を失う位だ。
どうも極度の緊張から開放されたタイミングやあずきバーのリラックス作用が引き金になるようだ。

ともかく先日のオカルトオタクのカウンセラーの世話にならずとも何とかやって行けそうだ。
むしろあの催眠療法の後の方がやたらとリアルな悪夢を見るようになった気がする。
市警本部長の紹介でなかったら訴えてやりたい所だ。

今日は隣の州の暴動騒ぎの鎮圧の為に応援で駆り出される事になった。
本来ウチのチームはオフの日だったが、ウチの市の警備体制が手薄になっても困るので今日は員数外のウチのチームにお鉢が廻って来た。

先日苦しい予算から購入した新車のSWATバンは快適で、チームのメンバーもつい居眠りが出てしまう始末。
ドライバーには申し訳ないが、元々はオフの日なんだから勘弁して貰おう。

昨今テロリストの扇動による暴動は後を絶たないが、今日の暴動の鎮圧は地元の市警察が主役で、俺達は各州の警察同士の連携強化と言う名目の政治的なプロパガンダでの応援出動だ。
当然担当もドンチャン騒ぎが治まった地域での、略奪や治安妨害阻止といった比較的ぬるい任務の予定だ。

移動の時間は貴重な休日の一部として俺もリラックスして一眠りする事にする。
悪夢を見たらそれは又その時に心配すればいい。
新車のSWATバンの快適なシートの心地良い感触に体が沈み込んで行くようだ...まぶたが重く...


今回の夢は未来の悪夢ではなく、SWATやSPになる以前の頃の経験のフラッシュバックだった。
俺はデルタの一員として初の任務で1993年にモガディシュのあの惨憺たる作戦に参加した後、数年間世界各地で退屈な任務を務めた。

その後1999年に米陸軍から出向と言う形である特殊作戦部隊の隊員として任務に就く事になった。
この特殊作戦部隊はロシア崩壊後、テロリストと化した元軍人達の台頭を憂慮したNATO諸国のトップクラス達によって秘密裏に結成された。

メンバーは俺のような米軍のデルタや英国のSAS、オーストリアのコブラやドイツのGSG9といったNATO諸国のその道のプロ達だ。
NATOの諸国家が人員と資金を互いに提供し、少数精鋭による準軍事作戦をこなす為に結成された10数名のアサルターによる対テロ組織。
それが俺達レインボウだった。

この特殊部隊について知りたければトム・クランシーが俺達をモチーフに書いた空想小説『Rainbow−Six』を読んでみるといいだろう。
実際の俺達の活動とは似ても似つかないが、部隊の趣旨や隊員たちのハートや精神はうまく描かれていると思う。

俺達が作戦行動を起こす時は大きく分けて二つのパターンがある。
一つは諸般の事情で表沙汰に出来ない破壊や暗殺任務といった秘密作戦。
もう一つはマスコミによって全世界が注視する中での対テロ任務。

前者の場合には俺達の流儀で自由にやらせて貰うが、一歩間違えば俺達自身がテロリストと定義されかねない社会的・政治的に危険な任務だ。

後者の場合には、俺達が現地の警察や対テロ部隊を装って作戦活動をする必要があった。
そう。あのミラノでのテロリスト一掃作戦もそんな任務の一つだった..

事の発端は囚人の護送だった。シャメル・マゴメドフ大佐。
元ロシア軍人。現在はチェチェンから資金援助を得てテロ活動を請け負うテロリスト組織の最重要人物と目される人物だ。

関係諸国の懸命な捜査・追跡にも拘らず彼の逮捕は失敗続きだったが、別件の些細な事件からまったくの偶然でイタリア警察が逮捕した。
テロリスト組織のメンバーによる奪還を恐れたイタリア警察は、最も警備が厳重とされている刑務所へ彼を秘密裏に移送する事にした。

綿密に計画された深夜の移送計画だったが、ミラノ市内の寂れたエリアに差し掛かった所で、仕組まれた事故により移送車両は足止めされて襲撃は起きた。
RPGやAK74、軍用ボディアーマー等かつてのロシア軍の装備で身を固めた50名を越える元軍人のテロリスト達は護衛の警察官達をほぼ全滅させ、マゴメドフ大佐を奪還。そのまま逃走を図ろうとした。

しかし今回の移送計画ではミラノ警察だけでなく、イタリア警察全体が全力を挙げて支援態勢を整えていた。
装甲車まで動員した強力な道路封鎖によって、テロリスト達は近々取り壊し予定のミラノ旧市街の一角に閉じ込められて篭城する形になった。
彼らは教会跡に拠点を置き、道路の各所に爆弾を仕掛けたバリケードを築いて警官隊の接近を防いでいる。

不幸にも2名の市民が人質になっており、バーと自動車販売店に監禁されているようだ。又テロリストはダーティボム (核爆発ではなく核物質の放射能による汚染を目的とした爆弾)の所有をほのめかしている。

イタリア警察は当初GIS(国家憲兵隊特殊作戦部)や中央特別警戒隊での対応を実施しようとしたが、ダーティボムの存在を知るに至った大統領の判断の下、我々レインボウの出動が要請された。

今回の作戦に参加する我々のメンバーは4名。50名近くの武装テロリストに対して4名とは無謀に思うかもしれないが、少数精鋭による隠密作戦での各個撃破が我々の真骨頂だ。
互いに本名を知らずチーム内でもコードネームで呼び合う仲だが信頼関係は厚い。

俺、イナークはチームでは『ディング』のコードネームで呼ばれていた。
日系米国人の俺の顔がオーストラリアの小形犬、ディンゴに似ているからだそうだ。
今回の任務では中・遠距離での市街戦が中心になりそうなので、メインウエポンにはM16A2を選択した。 キャリングハンドルに4倍スコープ ACOG TA01NSNを搭載してある。

このスコープには上部にアイアンサイトもあるので近距離戦でも不自由は無いが、消音性が必要な場合もあるのでサブウエポンにサイレンサー付きのSOCOM Mk23を装備する。
アーマーベストやその他諸々は標準のお約束装備

今回、他の3名は『エディ』 『ルイス』 『ウエバー』 の3名。
エディは別に『イーグルワン』 のコードネームでも呼ばれている。
(理由は不明だがお互い詮索しないのが隊内の暗黙の掟)
彼は俺と同じ米国人の筈だが今日は『ルイス』『ウエバー』と同じステアAUGを装備している。

作戦中は本部指揮官のクラーク准将の直属の部下、リードマン少尉が無線で状況報告と指令伝達を行ってくれる。

今回俺達は表向きはイタリア警察の特殊部隊、GIS(国家憲兵隊特殊作戦部)と言う事になっている。

地元警察のパトロールカーによる封鎖線を越え、目標のバリケードに向かう。
振り返ると3人のチームメイトがガスマスク越しに『気楽に行こうぜ』と表情でアピール。
満月とテロリストが点けた街並みの灯火のお陰でナイトビジョンは無用だ。

リードマン少尉からの事前のブリーフィングでは屋上にはテロリストのスナイパーが数名配置されているとの事なので最初の角から俺がちょいと覗いて様子を見る事にする。

いた。左手のビルの屋上。看板の前に黒い影
ACOGスコープを覗き込み、トリチウムで赤く発光するレティクルを人影に重ね、3点バーストを2回。6発の5.56mmのFMJ弾を撃ち込む。

『バババン!バババン!』
人影はそのまま崩れ折れた。

普段は隠密性の観点から9mm弾のサイレンサー付きMP5を使うことが多いので、M16A2の発射音はまるで花火の音のように派手に思える。
しかし今回は隠密作戦と言うよりはプチ戦争だ。
せいぜい派手にやらせて貰おう。

チームメイトと共に角を右に曲がる。その先の道路も緩やかに右折しているので道路の右側に停車しているバンや乗用車の陰に入りながら、クリアリングの基本、カッティングパイの原則を守って徐々に前方の視野を広げるようにする。

乗用車の傾斜したフロント越しに先の道路を見る。
金属製のゴミ収集車用のコンテナが転がされている。バリケードのつもりだろう。
テロリストの一人の上半身が見える。
『敵を発見!』 イーグルワンが囁く。

ボディアーマーを着ているのかもしれないが、頭と首は無防備だ。
ACOGスコープを覗き、4倍に拡大されたテロリストの頭と首の境目に照準を...
『バン!』 狙い済ましたセミ射撃でテロリストは顔面を真っ赤に染めてコンテナの裏側へ倒れる。

スコープを覗いた状態では視野が制限されるが肉眼よりも遥かに見通しが効く。
さらに続く道路が左折するあたりに破損したイタリア警察の護送車が見える。
その護送車の手前に一人..
『バババン!』 必殺のバースト射撃のつもりだったがテロリストは命中と同時に左手へ走り出す。
軍用ボディアーマーか!
『バババン!バババン!』
走るテロリストにそのまま狙いを定めて3点バーストの2連射を送り込む。
テロリストは護送車の運転席のあたりでそのまま倒れて動かなくなった。

と、同時に右手のビルの屋上の植え込みからAK47の発砲音!
『敵だ!』 イーグルワンが叫ぶ。
頭上からAK47の弾がかすめ、足元で跳ねる。パーティの始まりだ。

左に回避移動しながらスコープの照準を植え込みの黒い頭に合わせトリガを絞る。
『バババン!バババン!』 『バン!バン!バン!』
俺のM16A2のバースト射撃の2連射と同時にイーグルワンのステアAUGのセミオート射撃が植え込みに撃ち込まれる。人影は後ろに吹っ飛ぶように消える。

『敵を発見』ウエバーが冷静な声で告げ、遥か彼方の真正面のビルのバルコニーの人影へステアAUGのセミオート射撃を加える。
『バン!バン!バン!』
当たらない。俺はその人影の胴体の中央にスコープのレティクルを慎重に合わせトリガーを引き絞る。
『ババババン!』必殺のフルオート射撃だ。テロリストは崩れ折れた。

しばし訪れる静寂...だが騙されてはならない。奴らは俺達が前進してくるのを待っているんだ。
マガジンにはまだ4発残っているがこの機を利用して交換。
次の会敵がバースト2連射で決着が付かなければ命に係る。

周囲のビルのバルコニーを警戒しつつ護送車両に向かって前進を再開する。
左のホテルのバルコニーで何かが動いた!
と同時に2名のテロリストがサブマシンガンを連射しながら姿を現す。
『敵だ!』

スコープを使わずアイアンサイトでの咄嗟射撃でフルオートバーストを6連射。
『バババン!バババン!』
『バババン!バババン!』 『バン!バン!バン!』 『バババン!バババン!』

同時にイーグルワンのステアAUGも発砲。
俺とイーグルワンの発射した弾丸は2名のテロリストをボロ布のように撃ち倒した。

『仕留めたな!』
とルイス。
『ナイスショットだった』 とイーグルワン。
この手の待ち伏せが数多く待っていそうだ。今日はマガジンをベストの収納容量一杯に持って来ている。今日は会敵時に常に弾丸に余裕を持ちたい。
再びマガジンを交換してチャンバーの中の弾丸と合わせて31発の装填とする。

前進。左折する道路の角に着いた。目前には破損した護送車と先程撃ち倒したテロリストの死体。
振り返りチームメンバーにアイコンタクト。各自がかすかに頷いてみせる。
これからが本番だ。

道路は緩やかな左折を二回繰り返す。周囲のビルをチェックするが次の角までは待ち伏せは無さそうだ。中腰の姿勢から腰を伸ばし、早足に次の角へ歩を進める。

角の手前でカッティングパイ。左折する道路の右側の建物の窪みに人影。
テロリストだ。奴はまだ気が付いていない。奴のいる位置の少し先では建物が窓があるアーチ状に道路の頭上をまたぐ建築になっている。
俺が待ち伏せするならあそこにするな...

中腰になり肩を壁に付けて姿勢を安定させ、ACOGスコープの赤いレティクルを窪みの人影に合わせる。
『バババン!バン!』
バースト射撃を浴びせ、よろめく人影に止めの一発を叩き込む。
そして半身を角から乗り出して、先のアーチ状の窓の様子を伺う。
発砲音を聞けばきっと...来た!
『ババババン!』 フルオート射撃で窓のガラス越しに確実に撃ち倒す。

さらに半身を乗り出し、角の先に続く道路の左端まで視線を這わせる。
バリケードの左端にテロリストを発見。こちらに気が付いたのかしゃがみ込んだ。
だが上半身は丸見えだ。乗り出した状態でそのままスコープで照準を定める。
『バババン!バン!』 3点バースト+1の射撃でテロリストは崩れ折れる。

スコープ越しに遥か彼方へ視線を移す。
情報通り、車両やコンテナ等で本格的なバリケードが設けられている。
腰を伸ばすと車両の一台の屋根越しにテロリストの頭が見える。
体を右にスライド移動。半身を傾けた状態から普通の姿勢に。
慎重に照準を定め...
『バババン!バン!』 再び3点バースト+1の射撃でテロリストの頭を撃ち抜く。

カッティングパイのセオリーに従って前方をクリアリングしつつ道路の右端へ平行移動。今の所はテロリストの姿は無い。

乗り捨てられた車両を遮蔽物に利用しつつ左右の窪みに注意しながらバリケードへ向けて前進。
アーチ状になった建物の下をくぐる。
道路の右端に止まっている白のスポーツカーの背後に着いた時にそれは始まった。

『敵を発見!』 イーグルワンだ。
バリケードの突き当たりの車両の右からテロリスト!ACOGスコープを覗き込みバースト射撃。
『バババン!』 外れた!奴は車両の陰へ。
左から別のテロリスト。『バババン!』 照準を移しバースト射撃を浴びせ倒す。

『バン!バン!』 『敵を排除した』とイーグルワン。
冷静に俺が撃ち漏らした最初のテロリストを車両の窓越しに撃ち倒して報告。
また左にテロリスト!『バババン!』 バースト射撃で倒す。弾切れ!かがみ込みスポーツカーの車体の陰へ身を隠しマガジンを交換する。

『敵発見!』 『バン!バン!』 イーグルワンだ。テロリストの頭を正確に吹き飛ばす。

『ガコッバコッ』 敵の弾丸が俺が身を隠す車体を削る。
『バン!バン!』 『バン!バン!』
俺がマガジンを交換する間もルイスとウエバーが断続的な射撃で牽制を続ける。
何人のテロリストがこのバリケードを守っているのか?
双方の射撃が止み数秒の静寂が訪れる。

俺は最後に敵の発砲音が聞こえた方向にスコープを向けた状態で立ち上がる。
いた!やや右にRPGを背負ったテロリスト!
『バババン!バババン!』 正確なサイティングとは程遠い咄嗟射撃で撃ち倒す。
が、道路の左端にもう一人RPGの射手が居た!

『バヒューィィン』 独特の金属音の発射音とガスの噴出音が迫る。
運を天に任せしゃがみこみスポーツカーの車体の陰へ。
『ズガーーーーン!!』 外れた!

『バン!バン!』 『邪魔者を排除』ウエバーだ。RPGの射手を冷静に撃ち倒した。

しかしテロリストの新手が又2人、いや3人現れた。
『バババン!バババン!』
『バババン!バババン!』 『ババババババン!』

左のテロリストに弾丸が命中するのを確認して横殴りに右のテロリストへ射線を移し再び左のテロリストへ。3人共悲鳴を上げて倒れる。
弾切れ!再びかがみ込みスポーツカーの車体の陰へ身を隠しマガジンを交換。

『敵発見!』 『バン!バン!』 『敵を倒した!』 イーグルワンは確実に敵を撃ち倒す。

再び立ち上がる。テロリストが5人左右から湧いて出る。
『バババン!バババン!』
『バババン!バババン!』 『バババババン!』 『バババン!バババン!』

連携が取れない5人のテロリストは後手に廻ってまるでモグラ叩きのように俺の射撃に撃ち倒される。

すると右手からRPGを背負った射手が飛び出し左手の死角へ走る!
ここからでは撃てない!
半壊したスポーツカーの陰から飛び出し前進。
『バババン!バン!』 3点バースト+1でRPGを構えるテロリストを撃ち倒す。

こいつがバリケードの最後のテロリストだったようだ。制圧完了。
『バリケードの敵を排除した』 リードマン少尉へ報告。

と気が緩んだ瞬間、背後上方からライフルの斉射。
『バガーーーーン!!!』
バリケードに仕掛けられた爆弾に命中して爆発した。
良かった。コイツはダーティボムじゃない。通常のC2爆弾だ。

『後ろだ!』 ルイスが叫びながら振り返りながら応射。
『バン!ババン!』 アーチの窓のスナイパーを撃ち倒した。
『バババン!』 俺も念の為牽制で3点バースト。アーチの窓を制圧した。

バリケードの周囲は凄まじい業火に包まれてとても通過できる状態ではない。
リードマン少尉の判断も同じだった。
『バリケードは通れなくなってしまった。別のルートを見つけてくれ。急いで
 くれよディング。時間が無い』

『ディング了解!』 デジタルマップで代替ルートを検討する。
人質が監禁されているバーと自動車販売店を経由してテロリストの親玉が篭城している教会へ向かうには、左の側道から迂回し、建物内部を幾つか抜けて行くのが良さそうだ。

狭い側道の路地ではM16A2は取り廻しが悪い。撃ち合いになればショートレンジでの戦闘になるから、ここは SOCOM Mk23の出番だ。
M16A2をスリングで肩に掛け、ホルスターからサイレンサー付きのMk23を抜いて構える。

曲りくねった側道を通って通過予定の建物のドアに到着。予想はしたが鍵が掛かっている。チームメンバーにアイコンタクトを送ってからピッキングツールで開錠。
そっとドアを開ける。誰もいない。建物の廊下を抜け、出口のドアへ。

『誰だ?』 ロシア語で誰かがドアの向こうで囁く。
ドアを開けるのと同時に目の前に立っていたテロリストへMk23の.45弾を5発叩き込む。テロリストはくぐもった悲鳴を上げて絶命。

右の窓のある建物はテロリスト達が兵舎代わりに使っている倉庫だ。
チームメンバーへフラッシュバンを使ったクリアリングを指示する。

『了解。オープンフラッシュクリア!』 イーグルワンが頼もしく答える。
この状況ではM16A2の制圧力が必要だ。

Mk23をホルスターへ収め、M16A2を構える。
チームメンバーの3名がドアを開く気配で中のテロリストが何やら叫ぶ。
そのタイミングで俺は建物の外から窓と木製の壁面にM16A2のフルオート射撃を撃ちこむ。
『ババババババババーン!』 『グバーン!』
テロリスト達の注意が俺のM16A2の射撃で窓に向いた瞬間、フラッシュバンが炸裂した。
連中は数秒間行動不能になるはずだ。

『バン!ババン!』 『ババン!バン!』
イーグルワン、ルイス、ウエーバーのステアAUGが倉庫内のテロリストを一掃していく。
『バムッ!』
俺は右の胸に凄まじい着弾の衝撃を喰らう。倉庫内の敵が反撃?
いや、建物の外の路地の奥。右折している角からだ。

アイアンサイトで咄嗟射撃。
『バババン!ババン!』 マガジンの残弾全弾を路地の角の人影に送り込む。
人影はそのまま崩れ折れた。

俺と同じ発想で建物の外から廻り込むテロリストの存在を警戒するべきだった。
幸い着弾したAK47の弾丸は抗弾ベストが止めた。だがもっと慎重にやらないと命が足りない。

倉庫内はチームメンバーが制圧したようだ。俺は空になったマガジンを交換して敵が倒れた角に向かって路地を進む。
角からカッティングパイで索敵。いた。もう一人。
『バババン!バババン!』
アイアンサイトで咄嗟射撃。3点バーストの2連射で確実に倒す。

右に折れた路地の先をスコープで索敵。OK。ここは片付いた。
前進して倉庫の別の出口に向かう。出口でチームメンバーへ合流を指示。
『了解。移動中。付いて行きます』 とイーグルワン。
先の戦闘でもかすり傷すら負っていない3名が合流。

路地を抜けると道が多少開ける。
M16A2を構えたまま、通過しなければならない2つ目の建物のドアを開ける。
左右を索敵。OK。誰もいない。
最初の人質が監禁されているバーは突き当りの建物だ。

再びMk23を構え前進してバーのある建物内部へ。
バーは右の壁面のドアの向こう。
CDのバンド演奏が響いている。
テロリストは人質を前に酒でもやっているのか?元ロシア兵だからありそうな事だ。
デジタルマップはもう一つの入り口が建物の反対側にもある事を示している。

ハンドシグナルでタイミングを合わせた複数方向からの突入をイーグルワンに伝達。
2つの入り口は互いの正面なのでフラッシュバンは使えない。
『了解。ズールコードでオープンクリア』 イーグルワンが囁く。

チームメンバーを待機させ建物の外に出る。Mk23のマガジンを交換しながら建
物の壁面沿いをもう一つの入り口のドアへ向かう。
ドアに到着。かがんでサイレンサー付きのMk23を構える。
音を立てずにそっとドアを開ける。

ドアの外からの視界には左端に人質、その右に2名の監視役のテロリストが居る。
発砲!
『プシップシップシップシッ!』
『プシップシップシップシップシップシップシッ!』

2名のテロリストにマガジン全弾を撃ちこんで確実に無力化する。
同時に無線でズールコードを伝達。体をドアからずらしてマガジンを交換。

『了解!オープンクリア!』 イーグルワン達が反対側の入り口から突入する。
ドアの外の視界から、右端にもう一人のテロリストを発見。
『プシップシップシップシッ!』 Mk23で無力化する。

『後ろだ!』 ルイスがバーの窓の外に別のテロリストを発見。
『ババン!バン!』 『仕留めた!』と窓越しの射撃でイーグルワン。

『グバーン!』
俺が倒した3人目のテロリストが取り落としたフラッシュバンが炸裂。俺からは閃光は見えなかったが爆音で聴覚を数秒間失う。
チームメンバーはまともに閃光を見てしまっただろう。

M16A2を構え、バーの外の敵を索敵する。いた!もう一人。
『バババン!』
スコープのレティクルを合わせ、バースト射撃で撃ち倒す。OK。ここは片付いた。
まだ耳鳴りが残る状態で人質に接近。念の為後ろ手に手錠を掛けて拘束する。

『人質一名の確保を確認。急いでもう一名を救出してくれ。人質はその付近のガ
レージに囚われている。敵が君らを察知して殺害してしまうかも知れん』

とリードマン少尉。言うほど簡単じゃないんだが...

ハンドシグナルでフラッシュバンの影響から脱したチームメンバーに合流を伝達。
『配置完了!』 とイーグルワン。
バーの広場へ面した3つ目のドアを抜け、目標のガレージのある建物へ。
マガジンを交換。

半開きのドアの向こうにテロリスト!ACOGスコープの赤いレティクルを合わせ、
『バババン!バン!』 バースト射撃で倒す。
ドアに駆け寄り半開きのドアをそっと開く。かがんで中を索敵しようとすると..

『敵を発見!』
ウエーバーだ。俺より右に位置していたので壁の陰のテロリストと互いに視認し合ったらしい。
『ババババババン!』 敵のAK47の発砲。
『バン!ババン!』 反撃したウエーバーのステアAUGが敵を無力化する。

情報ではガレージへ続くドアは2つある。セオリー通り複数の突入路からの突入を決める。
遠い方、正面の突き当たりの備品室のドアへ向かいそっと開ける。OK。クリアだ。
そのまま右折して前進。突き当たり右手にガレージへ通じる件のドア。

今回もハンドシグナルでタイミングを合わせた複数方向からの突入をイーグルワンに伝達。
『了解。ズールコードでオープンクリア』 イーグルワンが答える。
俺は今通った備品室を戻って、もう一つの突入用のドアに向かう。

ドアの前でかがんでそっとドアを開ける。ドアの外からの視界では左方に人質。右方には銃を人質に向けいつでも撃てるように構えたテロリストが1名!
『ババババババババーン!』 M16A2のフルオート射撃で一気に倒す。
ズールーコードをイーグルワンへ伝達。
『了解!オープンクリア!』 とイーグルワンが答え、3名のチームメンバーがもう一つのドアから突入する。

同時に俺もガレージ内に突入。左右を索敵する。監視役が1名のはずがない。
いた!ガレージの外。左手の窓越しに一人。
『バババン!』 最初のバースト射撃は窓を割ってテロリストの背を向けた右肩に当たったが倒れない。
『バン!』
逃げようとするテロリストは割れた窓越しに全身を晒す。
『バババン!バン!』
バースト射撃を繰り返し、確実に無力化する。

『クリア!』 とイーグルワン。
室内の監視はチームメンバーに任せ、前進してガレージの外、右側を索敵する。
スコープには柱の陰に半身を隠したテロリストと走ってくる奴がもう一名。
『バババン!』 『ババババン!バババン!』 最初のバースト射撃で柱の敵を倒し、残弾を走ってくる敵に叩き込む。2人共もんどりうって昏倒する。

M16A2のマガジンを交換。左へ向き直り人質に向かう。後ろ手に手錠を掛けて拘束・確保する。

『良くやってくれた。人質は2名とも確保したな。後はゴミ出しだけだ。敵はその
 付近の教会に立て篭もっている。慎重を期しつつ襲撃して排除しろ』

とリードマン少尉。

そのゴミはダーティボムを爆発させるかもしれない奴らだ。もちろん慎重にやるさ。
念の為、ガレージ左端の割った窓から出て周囲を索敵。OKクリアだ。

『フォーメーション!』
チームメンバーに合流を指示してガレージに面した道路を右へ。教会へは突き当りを左折だ。
突き当たりの角で一旦停止。振り返ってチームメンバーの合流を確認。OK。

角から半身を乗り出して左方をスコープで索敵。歩哨のテロリストは1名だけだ。
『バババン!』
そのままレティクルを合わせて3点バースト。目標はそのまま崩れ折れる。
木の陰や建物の窪みに他の敵がいないか確認しつつ前進。教会へ続くドアへ向かう。

OK。ノープロブレムでドアに到着。ドアをそっと開け内部を伺い、入って右折する。

この突き当りの左が教会だ。
突き当たりの角から左の様子を伺う。ベンチや樹木に視界がさえぎられている。
半身をさらに乗り出してスコープで索敵。
いた。1名。後数名はいるだろう。教会までは一本道だ。強行突破しかない。
『ババババン!』 フルオートの4連射でまず一人。

体を徐々に右にずらして長距離のカッティングパイ。いた。もう1名。
『ババババン!』 再びフルオートの4連射でこれも倒す。

今度は連中の方から視界に入ってくれるだろう。そのままスコープで通路の出口を索敵しながら静かに前進する。

『敵発見!』 イーグルワンだ。通路出口の左手から1名出てきた。
『ババババン!』 フルオートの4連射で無力化。

『標的発見!』 今度はウエーバーだ。通路出口の右手から1名。
『バババン!』 3連射。外した!
『バババン!バン!』 連射するが左へ駆け出した奴の後方を空しく曳光弾が走る。残弾ゼロ!

『バン!バン!』 すかさずイーグルワンがステアAUGのセミで撃ち倒す。
『一人倒した』 とイーグルワン。

チームメンバーの見事な連携に感謝しつつマガジンを交換して前進。教会へ向かう。
しかし目標のシャメル・マゴメドフ大佐はおろか、誰も姿が見えない。

『下水道へ入った跡がある』 ルイスが目ざとく連中が逃げた痕跡を見つけた。
地下へ通じる梯子へ近付いてそっと覗き込む。
梯子周辺にはもう敵の気配は無い。ひどい臭いだ。

『教会は制圧したな。下水道内の敵の追撃と排除を許可する』
とリードマン少尉。

『ディング了解』 俺は答えて覚悟を決め梯子を降りる。
ヘリコプターからのファーストロープ降下の要領で、ノーメックスのグローブに摩擦熱を任せて一気に滑り降りる。

梯子の底で再びM16A2を構えて索敵。誰もいない。OK。梯子の底から下水道へ通じる通路へと向かう。
チームメンバーが梯子を降りてくる間、カッティングパイのセオリーで通路の出口から下水道内の様子を伺う。
出口の左右共に近くに人の気配は無い。半身を乗り出してスコープで覗いて見るが左は長く下水道が続き、右は金属製のフェンス状のドアになっている。

奴らはもう逃げたのか、それとも...
チームメンバー全員の合流を確認してからさらに体を乗り出して索敵。

いた!下水道の左側。張り出しとパイプの所に2名!奴らはここで決着をつける気だ!
『バババン!』 まず張り出しの所のテロリストを排除。
『バババン!バババン!』 張り出しとパイプの隙間に見えるもう一人の胴体に6発撃ち込んで倒す。

む?下水道の右手に何かの機械音が微かに聞こえる...
右手に向き直り、ACOGスコープで徐々に身を乗り出しながらフェンスの向こうを索敵。
ダーティボムだ!その傍らに1名のテロリスト!俺を見つけて何かロシア語で叫ぶ。
反射的に頭部を狙ってトリガを引く。

『ババン!』 頭部から真っ赤な脳漿を撒き散らしながらテロリストは後ろへ吹っ飛ぶ。
こいつがシャメル・マゴメドフ大佐だったのは後で知った。

他の奴にダーティボムを起動されてはかなわない。念の為下水道の左をもう一度索敵して安全を確認してから下水道に入り、右手の奥の死角を索敵する。

いた!壁面に張り付くように1名。
『バババン!』 M16A2の3点バーストはテロリストに正確に命中。無力化した。
さらに索敵。OK。片付いたようだ。

『それで最後だ。良くやったな。撤収に入れ』 とリードマン少尉。

念の為ダーティボムに接近。安全を確認する。
『爆薬が仕掛けられている。慎重にな』
爆弾に近付く俺に不安を覚えたんだろう。ルイスが警告する。大丈夫。触らないって。

こうして俺達レインボウは又もテロ事件を解決した。
マスコミはイタリア警察の快挙と大騒ぎだ。
俺達は人知れずテロと闘う影だ。それでいい。

その後、2001年の9.11の大規模なテロ事件以降、テロとの闘いは俺達のような半私設特殊部隊から国家レベルでの闘いにステージを移した。
他にも色々と理由はあったが俺は引退して気楽な(と思っていた)SP任務を志願した。

SP任務は散々な経験に終わったが、今は市警のSWATでそれなりに日々を楽しんでいる。
レインボウで共に闘ったイーグルワンが、やはり引退して市警の特捜部で活躍している事を今の俺は知る由も無かった。

『リーダー。イナークリーダー着きましたよ』

SWATのエレメントメンバーのジェラルドが俺を起こした。
『ぐっすり眠ってた割には少し疲れた顔してますね。又嫌な夢でも見ましたか?』

『いや。昔の思い出をちょっとね...あれ?どうしたんだココ。』
SWATバンが止まっているのは厳重にパトカーと警官に封鎖された宝石加工店の前。

『テロリストが宝石加工店を襲ったらしいんです。暴動はこの襲撃の為の陽動だった
 ようで。人質を取って篭城してるんで、俺達へ突入の依頼がこっちの市警本部からあ
 りました』
とレイノルズ。

『こりゃ反則だよ。交通整理みたいなもんだって言うからOKしたのに...』

『テロリストはこの前のアメリカ・ナウの連中と同じで完全武装で、ここの市警の連中には
 手に余るって事らしいです』
レイノルズはすでに諦め顔。

『どうして俺達はいつも貧乏籤なんでしょうねぇイナークリーダー』
4名のエレメントメンバーが声を揃える。それは言うな....

過去の戦闘を夢で追体験した寝起きにメンバーに責められる俺を又あの幻覚が襲う。

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 Movie   The Day of the Rainbow

 Photo   Rainbow仕様のM16A2他装備一式

 Photo   ACOG TA01装備のM16A2Rifle

 Photo   ACOG TA01装備のM16A2Rifleその2

 Photo   TA01スコープをキャリングハンドルに装備

 Photo   Rainbow装備一式

 Photo   サイレンサー装備のSOCOM Mk23

 Photo   Shootingに使用したTarget

 Photo   Shootingに使用したTarget