Eagle-One's story 16 "Eagle-One Units"

【あらすじ】
イーグルワンはリードマン中尉の依頼で特捜部のチームメンバーとテロリストの拠点、バンダーバール邸を強襲した。(イナーク編第20話参照)
作戦は成功に終わったが彼のチームには休む間もなく次の任務が待っていた。





バンダーバール邸の捜査はまぁ及第点の動きだった。
普段は好き勝手に動く面々もそれなりにまとまりを見せてくれた。

だが、闇の勢力図はバンダーバールの資金凍結、マンシュタインへの追い込みに
より大きなうねりを見せていた。
台頭を計る組織。すり潰されていく組織。そんな勢力図の中、一人の潜入捜査官も
危険な立場に追いやられたという。

今回、軽微ながらも別件で彼を逮捕し身柄をとりあえず確保する事となった。
ダディの話では、ハワイにかのガルシア・フランシスコ・ペタスの姿も発見したとか。
あいつにはいろいろと借りがある。出来ることならハワイに飛んで挨拶したいものだが。

奴の組織は今のところ消滅したとされている。今後の台頭も目される今、動静に注視せねば
ならないだろう。この市の悪党はまったく躊躇ない。

『では、5番街で銃の不法携帯でしょっぴくと』
「そうだ。すぐに保釈金を用意してくるだろうが、お前の名前でしばらく囲う」

ダディは眉一筋動かさず言う。弁護士には俺はかなり受けが悪い。
今後国選弁護人でさえ俺を弁護しようとは思わないだろう。まぁ、そんな事態にはならんだろうが。

「ハンクス。今回はお前は別件で動いてもらう」
「・・・?」
「ハワイに行きたくないか?お前は晴れて特赦を終えた。有給を使って観光もいいだろう」
「・・・そうですね。最近のハワイは楽しそうだ。いろいろとね」

ダディは奴を見逃すつもりはないらしい。

「ジェニファ。イーグルワンとツーマンセルだ。文句はないな」
「・・・・」

微妙な顔をされると少し凹む。だが肩をすくめて笑う彼女は美しい。

ヨシュアはハンクスと。バーンズは俺たちのバックアップとなった。
潜入捜査によるマネーロンダリングはもう大詰めだったが、今の暗黒街の急変の流れは
危険すぎた。ここは疑いを極力回避しつつ身を引かせるべきだった。

ケンがまだリハビリに身をやつす今、動けるユニットはわずかだった。
こんなサルベージもイリーガルユニットの役目になる。

5番街。イカれたシェビーで約束の場所に乗りつける俺とジェニファ。
刻まれた弾痕もそのままだ。板金修理はキャサリンが渋っている。まったく俺は好かれていない。

「あと5分。不思議ねイーグルワン。貴方と二人で動くなんて」
『そうだな。いつも振り向くと居なくなってた』
「そういう関係なのよ。でもちゃんと見てるわよ?」
『ありがたいね。天にも昇る気分さ・・・アレだ』

BMWが一台。運転手が今回確保する「ベロッキオ・ファミリー」の会計士。
名はサトシ。俺と違ってあくまで身を潜めるタイプの捜査官だった。

『いこう』
ジェニファが先行する。こういう場合、組織のシューターか手の者がマークしている場合が
ある。全体を見渡し、即座に手を打てる方が後ろにいた方がいい。

某かの会話の後、ジェニファとサトシは手はずどおりのやり取りののち、逮捕という形の保護を
成功させた。ひとまず成功だった。

ジェニファは流暢にミランダ警告をそらんじている。
たいしたものだ。俺はバッジのブックの裏に貼っているが、読んだ事はない。

その後、バーンズの手はずでパトカーが乗りつけ、サトシを載せ出発した。
ひとまず抗争で貴重な捜査官が危険に晒される事は回避されたわけだ。

「ありがとう。助かったよ」
サトシは後部座席で物々しく警官に挟まれたふりで一息ついていた。

「どうも。まぁしばらくは大丈夫だと思いますよ。データは?」
「たまたま持っていたよ。しばらく大丈夫って?もう弁護士が動くと思うよ?」
「イーグルワン名義でごねるそうです。まあ3日はこれでいけますね」
「ああ・・・彼。ハンクスの新しいパートナーだったね」

バーンズはかすかな違和感をその一言に感じた。敵意・・・?
確か、サトシはハンクスの前のパートナーだったと聞く。

かのハンクスはすでに機上だ。有給休暇でハワイ。いろいろとあるが、正直
うらやましくもある。その先の血なまぐさいもろもろはごめんだったが。

イーグルワンに報告しておいた方がいいだろう。普通ならそんな違和感なんか上司は
興味を示さない。イーグルワンはそんな勘にすら価値を見出した。
聞けばダディもそうだという。そういうものなのかも知れない。

サトシ。3日間粘って保護するのは、いささか大変かも知れない。これも勘だ。
バーンズは有給に一時夢を馳せた。

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州警察の一室で、ハンクスは少女と相対していた。
少女はあくまで、今回保護された被害者という存在だ。
前歴の有無は立件されていない。

「なるほど。俺向きだ」
「・・・・」

一人ごちるハンクス。こんな子供が『暗殺者』として仕上げられている。
それも完璧に。イーグルワンなら、今頃大変な事になっていたろう。
子供絡みだとあいつは冷静さがなくなる。それに、今回はいろいろと別件に
興味があった。
州警察の面々は今は別室で待機している。イリーガル特権を駆使し個人面談
としていた。取調室の盗聴器はすべて潰してあった。

「さて嬢ちゃん。いろいろと聞きたい事があるが・・・語ってはくれないね?」
「・・・」

ここに来てからまったく無言。陽気なハワイアンはそれを被害者のショックと
捕らえていた。南国はお気楽で結構だ。

「バナナフィッシュ。知ってるかい?」
「!・・・」

十分な反応だ。本部長は今回ガルシア確保といった。だが、俺はこちらに興味があった。
かの件を追うジェニファも本当はこっちに来たかったろう。

本当に子供だ。こんな子供が俺をも凌駕するスキルを持つとは。
自負はさておき、冷静に彼我を見極めるハンクスは内心舌を巻いていた。

「答えたくないなら、それでもいい。だが、答えてくれたら外でここを張ってる
青年・・・ワタギっていったか。彼の元に返してもいい」
「・・・・・!」

「意外かな?俺は、知りたい立証に興味があってね。今回の主犯は確保したしね。
後はバカンスして帰るだけなんだ。勤勉になるつもりはないしね」

もともと愛嬌のある顔でウィンクする。

「ワタギ・・・待ってるの?」
「ああ。嬢ちゃんを保護した時からずっと・・今も気配はおもてにある」
「banana・・・それをいえばいいの?」
「ああ。約束は守る」

本部長も把握していないかの薬物。引き当てた俺はラッキーだった。

面会終了後、約束を果たすべく俺は司法取引と、イリーガル特権を盾に州警と
話を進めていた。その中で・・・

「ガルシアが非合法薬物売買?」
「ええ。物証はないですが、立証します。政府関係者の暗殺容疑も浮上して・・・」

いきる州警の顔を見るハンクスは、観光地の珍しい生物を見るそれだった。

いろいろと多重にしかけられた仕組みがあるらしい。
俺としてはバナナフィッシュが引けたのが、今回の収穫だったが・・・

「ガルシアは今どうしてる?」
「まだ昏睡したまま、警察病院です。仲間の一人は逃亡したままですが・・・」

ならいいか。俺が手引きするまでもないだろう。悪い事をした。
いろいろとババを引かされたんだろう。こんな青空の楽園で。

「ところで彼女の件だが・・・」
ハンクスは切り出した。

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タブロイドの記者が詰め掛ける正面玄関に、デコイのバーンズが
乗り付けていた。
俺は裏口からサトシと署内に納まった。
俺はともかく、サトシはまだ公然と晒す訳にはいかない。

「君がイーグルワンか」
『どうも。噂は聞いてますよMr.サトシ』

潜入捜査官のマニュアルにも度々テキストとして使われるその仕事っぷり。
二重スパイもこなす浸透力。彼は俺の対極にいる存在だった。
俺はもう潜入捜査は不可能だった。

幸い、スポンサーの資金凍結により賞金沙汰は収まったらしいが。

「ハンクスが世話になっているようだね」
『今はハワイでバカンスですがね』
「・・・君は興味深い」
『・・・?』
「賞金の操作をしたのは僕なんだ。君が消せるかと思ってね」
『・・・残念ながら今、こうしてる』
「そうだね。ミルズも君には手を出しかねている。中尉の影もあるんだろうけど」

なんとか正面玄関を潜り抜けたバーンズは、通路で対峙する二人を見た。
今にも抜きそうな空気に息を呑む。
やはり、勘は当てにしていいらしい。場違いな感慨が心をよぎる。

『深入りしすぎた潜入捜査官は危険。確か貴方のマニュアルだったと
思いますが?』
「・・・そうだね。秘密を知る者の愉悦。これを味わうと更に深く愉しもうと
深みにはまっていく。僕はそんなに迂闊じゃない」

ダブル・スパイとなって秘匿情報を操ろうとし、結果流れに消えた捜査官は
実は多い。彼らはその秘密の果実に酔いしれた結果、足を踏み外したのだ。

「イーグル・ワン。部屋が用意できてます」

ジェニファがやんわりと入ってきた。ふっと揺らぐ空気。
スッと歩き出すサトシをエスコートしつつ、ジェニファが肘うちする。
無言の抗議らしい。俺が悪いのか?俺は何もしていない。
ただ・・・あいつが辞職してからこっち少しやさぐれていたかも知れないが。

とりあえず今はデータを収集だ。俺はパソコンって奴はどうも苦手だった。
出番はない。ジェニファに続きバーンズが歩き出す。
彼らがいれば、とりあえず大丈夫だろう。

ブー・・・・ブー・・・
胸ポケットで携帯がバイブする。パッチョからのメールだ。
全寮制の学校に入れたはいいが、毎日メールをよこす。
携帯でメールを打つってのがこんなに至難だとは思わなかった。電話したら
怒られた。この電文に意味があるらしい。

せめて父親として、できる事はしてやろう。俺はパッチョが画面一杯に送ってよこした
文を読み始めた。

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サトシのもたらした情報は、マネーロンダリングから始まり
国外に持ち出しを禁止されている電子機器の不法取引まで、多岐に渡る犯罪をすべて網羅していた。

当然これらのデータを閲覧提示したという事は、表向きにはならない。
ネットにアクセスし、キーを用いて開いた履歴も残らない。
ジエニファーとサトシは、クラッカーとしても有能だった。

俺?俺はシューティングレンジで一服していた。

『火、ないか?』
「レンジは禁煙ですよ?」

複雑な顔で、ブックマッチを擦り火をよこすバーンズ。
自分も煙草を咥え火をつけている。

『いろいろ進展してるようだな』
「そうですね。後は・・・まぁこの件は押えるだけで泳がせるみたいです」
『バンダーバールにつながるものはなかったのか?』
「マンシュタインまでいろいろすべてありましたよ」

紫煙が、レンジに舞う。すべてを知り操る。なるほど、魅惑の世界だ。
彼は迂闊ではないと言ったが・・・俺を陥れた真意を聞いていなかったな。

「イーグルワン?」
『なんだ?金ならないぞ』
「・・・いりませんよ。サトシってどうなんでしょう?」


ふー・・・
キャメルはマイルドがうまいなんていったのはどこのどいつだ。

『どうとは?潜入捜査官として教本になる男だ』
「わかってます。そういうんじゃなくて・・・」
『・・・試されてるんだ。よく考えてうまく立ち回れ』

彼は試している。彼は職務をまっとうしている。浸透し様々な情報を操作、収集
しているが、道を踏み外してはいない。
俺に賞金をかけた、というのは本当だろう。だが、そんな事を今論うつもりはない。
彼の存在は、失う訳にはいかないほどに大きいからだ。

「よくわかりません」
肩をすくめるバーンズ。俺の真意を探ろうとしているらしい。

『それでもいい。まっさらに情報を得て吟味するんだ。真贋を嗅ぎ分けるのも
必要なスキルだ』
「・・・わかりました」

わかってない顔で頷くバーンズ。随分と素直になったものだ。

どこかで会ったような気がするが、はてどこだったろう。

「アメ、舐めますか?」
『・・・ありがとう、いただくよ。ああ・・・そうか』
「・・・どうも」

レンジに向かい、二人銃を並べる。歳を取ったと思う。あの日の坊主が今隣に。
スコア競争ではまだまだ負ける訳にはいかんな。

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 サトシの属する組織は何とか建て直し、この騒乱の最中にも
生き延びる見込みがついてきていた。
 囲い込みもそろそろ限界を迎えつつある。
 下院議員の一人の名義で抗議も届いていた。息がかかっているのだろう。
リストアップして今後は失脚を目処に捜査対象とする。
 税金の使い道は、正しくなければならない。

「世話になったね」
『いえ』
「・・・」

ジェニファーは俺の後ろで俺を制している。別に何もしやしない。

「ハンクスもそろそろこっちに戻ってくるだろう。手土産を持って」
『・・・?』
「バナナフィッシュ。聞いたことはある?」
『いえ』
「・・・そう。まぁいい。今回はそれどころじゃなくなるかも知れないね」
『・・・』

ジェニファが身じろぎしている。何か、いろいろ訳ありらしい。

「・・・僕は、ハンクスの新しい相棒に興味があった」
『・・・』
「まだ認めた訳じゃない。でも、不満も特になかったよ」
『どうも。もう10年来の付き合いですから』
「そうだったね。彼を手懐けたのは大したものだといっていい」


気に入らない言い回しだったが、肩をすくめるだけにとどめた。

背後のジェニファが怖かったから。

「今後も僕は潜伏する。賞金はもう解除しよう」
『どうも。そうしていただけると助かります』
「いい明日を」
『今日をよくする事で精一杯ですよ』
「いい心がけだ」

手を振ると、保釈金をたんまりと積まれた彼は正門から堂々と出て行った。

更に深く、潜入し浸透するために。情報を掴むために。
バナナフィッシュ。なんだ?

「バナナフィッシュ・・・」
ぽつりと呟くジェニファに問おうとした時、バーンズが現れた。

「ピックボス。ハンクスから電話が入ってます」
『・・・オーケイ。マカダミアナッツは買ったのかな』
「さあ?まだ間に合いますよ」

この後、とんでもない展開になるとは、思いもしなかった。

(((((((((((((((((ミ・ω・ミ) ピューッ ←とんでもない展開にした人

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 男は、ホテルの一室で流れる雲を見ていた。
かれこれ2時間になる。

デスクで情報を精査する作業を行いつつ、ハザート・トラヴィスは
その後姿を見た。
ガルシア・フランシスコ・ペタスの組織が市警に襲われ、自分たちが雇って救出に向かわせたミルズの手に吸収された挙句、ハワイで確保された。

賞金をかけていた組織の消滅。ミルズの裏切り。出国の困難。
様々な障害が今「警備会社」をゆるがせている。

サー・マンシュタイン。かの男の狂気に、魅入られた者たちが組織を作っている。
かの自分もそうだった。サーの狂気の騒乱に呑まれここまで来た。
そしてこれからも。もう戻れない場所まで来ていた。

「トラヴィス」
「はっ!サー」
「ミルズを潰すぅ。アイリーンのところで買い付けた銃を分配しろぉ」
「はっただちに」

警備会社のメンバーは今、近隣に分散し身を潜めている。召集をかける時がきた。

「ガルシアはどういたしましょう?」
「市警が保護したらしいなぁ?」
「はっ」
「・・・殺せ。もう賞金もでなかろぉ?」

ミルズと事を構える。彼の思考と行動にリスク・マネージメントはない。
市警の襲撃に、ミルズとの抗争。自分の望む闘争がここにはあった。

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 ハワイでの一件、そしてクィーンのロストは組織内でも
問題となっていた。
事に問題はハワイでの出来事だった。
最強のアサシンの確保の失敗。そして協力者、いや「捨て駒」だったガルシア・フランシスコ・ペタスが市警に確保、搬送されたという事実。

いかなる漏洩もあってはならない。今、組織は基盤を作るべく動き出していた。
市警がもたらした闇の勢力図の混乱。この機に乗じ、組織の足がかりをつくる。

これは大事なビジネスだった。つまらない障害につまづく訳にはいかない。

組織は、ガルシアの暗殺を決定した。
組織は知らない。ガルシアが記憶を失っているという事を。
イーグルワンの抹殺は、二の次となった。とある男が末端の構成員に手をかけている事も。その男が、警備会社と与し組織に仇なそうとしている事も。

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市警の一室で、俺たちは会合した。

『よう。レイは下げてないのか?』
「ああ」
『マカダミア・ナッツは買ってきてくれたか』
「・・・オーケイ。俺の話を聞けイーグルワン」

手を上げて降参するハンクス。

「あれはもう市警襲撃犯、ガルシア・フランシスコ・ペタスじゃないんだ」
『だが、ガルシアだ』
「記憶がない。彼は別人として医師も犯罪訴追は出来ないと診断しているんだ」

ガルシアは今、市警のセーフ・ハウスに保護されていた。
そして、警護にあたるように指示されたのが、俺たちって訳だ。

『お前はいなかったから、そんな事がいえる。市警で奴を許せる奴は居ない』
「ああ、彼がガルシアなら、な」

ハンクスは辛抱強くいった。いったい何をたくらんでる?何か含んでる。
懐のシガーケースを賭けてもいい。アンティークの一品物だ。

「彼は、今は善良な一市民でありかつ、極めて微妙な立場にあるといっていい」
『記憶が戻った瞬間、罪人になる』
「ああ、そうだな。だが、それだけじゃない」

腕を組んで見守るジェニファー。バーンズにヨシュア。俺たちが守るのは、
かの男。
ガラシア・フランシスコ・ペタス。
サトシのもたらした情報によると、市警襲撃の黒幕。そして今は、ミルズの構成員。

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「まぁ、一杯やれよ」
『もうやってる』

たまの休日。食材を買出しに二人で出向き、今は去り行く休日を
惜しんでいる。
ハンクスはいつまで、俺とシェアするつもりなんだ?

「のようだな。俺もいただくとしよう」
『・・・ハンクス。あいつの件だが』

今は署の数人が警護に当たっている。かなり自由が与えられている
ようだ。まぁ当座の危機は懸念されていない。
セーフハウスに保護された被疑者。医師もスタックし常時動向を見守っている。

「ああ、なんだ?」
『何故そんなに肩入れする?何かあるのか』
「ある。いろいろと。聞きたいか?」
『いいたいか?』
「あまり」
『ならいい。まぁ、記憶が戻るまで付き合うとするよ』

ケンは本部長の特命で、あの男のマークに付くことになったらしい。
快気祝いもほどほどに、ご苦労な事だ。
あの男が辞退しなければ、イーグルユニットは俺ではなかった。
あの男はどこか、孤高な男だった。ショットガン・ダディとは違うタイプの。
タイトロープに立ち続けるために、多くを失った。
でもいまだ立ち続けている。署の多くの者が彼を敬愛していた。

「ジェニファーはもう先に向かっている」
『ガルシアは何かお二方の興味の種を持ってるらしいな』
「・・・まぁな。すまんな。いろいろとある」
『いいさ。隠し事があった方が人生は楽しい』

ガルシア。俺は甘くない。お前が記憶喪失のピアノ弾きだった道化と
思っている。償いは必ずさせる。
だが、記憶が本当にないのなら、被疑者ですらない以上必ず守る。
それが給料分の仕事なら。

プルルル・・・・
『アロー』
「こんばんは。いい夕焼けね」
『そうだね。この部屋は西日も当たらないけれど』

ワイズマンだった。俺は月に一度は携帯が変わる。当然番号も。
支給品だから気にもしていないが・・・今後はキャサリンにも相談しなきゃいけないようだ。

「ガルシアの所在地、セーフハウスが闇ルートに盛大に流れているわよ?」
『・・・なんだって?』
「ミルズに警備会社。こぞってあの首を欲しているわ。彼は闇社会では今一番ホットね」

俺の気配に、ハンクスはもう支度を始めている

『なんだってまたそんな事に?おだやかじゃないね』
「情報の流出元は、サトシよ。彼の特権と情報処理は一回見直したほうがいいわ」

『ありがとうワイズマン。まったく同感だね。お代は?』
「あなたじゃ払えないから、ダディにツケておいたわ」

『ありがたくって涙がでる。助かるよ』

さあ、休日はもう終わりだ。

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ガルシアの保護されているセーフ・ハウスは郊外に近い
住宅街にあった。
やや外れ。何かあっても、近隣に最小限の被害を出すだけの場所。

棺おけになるか揺り篭になるかは、ディフェンスの腕次第という訳だった。

「了解しました。彼の移送は・・・はい。では待ちます」
「・・・・?」
「この場でイーグルワンたちを待って、指示待ちだそうよ」

受話器を置いたジェニファの応えに、げんなりするバーンズ。

「ビックボスが来る前に来客があったら?」
「排除する権限は与えられているわ」
「・・・そいつは素敵ですね」
「彼は?」
「窓の外をボーッと見てますよ」
「カーテンは?」
「勿論してあります。狙撃ポジションはすべて警邏が」

車を飛ばせば3時間とあけずに彼らは到着する。おそらくもう向かっているだろう。
これは勘だったけれど。
そして悪い予感もまた渦巻いていた。

イーグルワンからの定時連絡も変わりはなかった。だけどあの男は嘘をつけない。
声の調子も普通だった。でも嘘をついていた。
傍聴を考慮しての事だろう。焦りを確かに感じた。
今週末、もしかしたらもっと早く。嵐が来る。あの男がここに来るとともに。

いかれたシェビーのハンドルは重い。パワステも付いていない上に、
防弾で車重があるからだ。タイヤもそうだから始末に終えなかった。

途切れ途切れのカーラジオからはスローバラード。
漆黒のルートを照らす灯りのみで、後は闇が包む郊外に進む道。
隣りにはハンクス。後ろにはヨシュア。

ああ、快適なドライブさ。ご機嫌だとも。

「・・・焦るなよイーグルワン」
『ああ、安全運転をしてるよ。ハイウェイパトロールに捕まっちゃ始末に終えない』
「逝き急ぐなって事さ。パッチョがいる」
『忘れた事はないぜ?』
「ああ、わかってる。だからこそ言っておこうかと思ってな。守りに入ってもダメだしな」

言葉を選んでいるハンクス。ああ、肩に力が入っていたようだ。

『そうだな。ヨシュア、神様はなんていってる?』
「お前が嫌いだ」
『だ、そうだ。まだまだ天には召されそうもない』

守りに入って、生きたいと思えば弾が当たる。死にたいとも思わないが。
勘も鈍れば、生き残るコツが見えなくなる。中尉がいたなら、まずブン殴られていた。

『給料分の仕事をすればいいんだろ?要は』
「まぁ、そういう事だ」

大切な血税だ。寝る間もないとはいえ、文句なんかとても言えない。善良な市民の安寧が
俺たちの仕事だ。喜んで働くとも。これくらいのスタンスでいい。
守るべきものがいる、なんて大仰に考えなくてもいい。
生きなきゃいけない、死ぬ訳にはいかない。いやいや、大げさな話だ。気楽にいこう。

 Photo   Eagle-One用のシェビー

 Photo   Eagle-One用のシェビーその2

 Photo  Eagle-OneのP226R

 Photo  Eagle-OneのP226R その2

 Photo   Eagle-OneのP226R その3

 Photo   Eagle-OneのP226R その4

 Photo   Eagle-OneのP99 

 Photo   Eagle-OneのUSPC

 Photo   ハンクスのM92F

 Photo   ハンクスのM92Fその2

 Photo   ジェニファーのF92FS

 Photo   ヨシュアのSW1911

 Photo   ヨシュアのSW1911

 Photo   バーンズのインフィニティ