Eagle-One's story 11 "The inspector Jeff"

【あらすじ】
落ち着いたパブでつかの間の平穏を楽しむイーグルワン。しかし賞金首の彼を追う犯罪者達は容赦なくパブを襲撃する。その時パブのマスターが取った行動は...




いろいろな事が瞬く間にあった。

昔を知ってる住人はともかく、新しく住み着いた住人は
尻に帆かけて逃げ出しつつあった。
この街はそれでいい。それでもこの水に馴染めば意外と住みやすい。

今日は非番で、俺は一人パブで一杯やっていた。家はいささか、その。賑やかだ。
心地よいジャズがラジオから流れている。客は俺一人。

『マスター。うまいカクテルだ。だがもう少しジンをたらすともっとうまい』
驚いたような顔を一瞬浮かべ、にこりと微笑み頷くマスター。

場末のパブだが、こういったいい店を見つける可能性があるのが楽しみなんだ。

豊かな時間。いろいろな事があった。だが、まだ終わっちゃいない。
そう。俺たちは諦めたり投げ出したりしない。給料分の仕事はしないとな。

ババンッ!

カウンターを穿つ銃声と弾丸。俺はストールから転がり落ちるように隠れた。

『すまないマスター。俺の客らしい』
俺としては不本意だったが、俺を狙う輩が随分と増えた。
賞金か逆恨みか、名を上げようというのか。

いずれも俺にとってはいい迷惑な話だった。俺はオフくらいゆっくりしたい。
P99USPcはもう手に収まっている。
外を囲む気配は20。押し通って寝床に帰るには少ししんどいか。

窓越しに外を見る俺の横に、マスターが現れた。
手にはショットガン

『…マスター。シェーカーの方が似合ってる』
「カウンターの裏に地下通路に抜ける扉があります。どうぞお逃げください」

マスターの銃の握り。身じろぎはただの飲み屋のマスターではなかった。

「ここは私が」
『俺は・・・』
「存じています。ジェフ警部によろしくお伝えください」

外の連中はじわじわと輪を縮めている。時間はなさそうだ。
『何故俺を助ける?ダディの紹介?』
「いいえ。警部には助けられましたが…貴方は私のカクテルを褒めてくださった。
それであたしにゃ十分体を張る理由になるんです」

バババンッッ
窓から無造作に打ち込まれるサブマシンガンの斉射。
「さぁ。お急ぎください。ここはあたしが。今度は言われたとおりのレシピでご馳走しますよ」
にこりと笑ってウインクするマスター。

『・・・楽しみにしてるよ』
俺は立ち上がると、入り口に向かった。こそこそ逃げる趣味はない。
マスターの援護があれば、まぁ問題ないだろう。

いろんな事があった。いろいろあってこの街に流れ着いた。
そんな一人が俺だ。だが、俺はこの街が気に入ってるんだ。

署内の一室、ショットガンダディことジェフ警部の部屋は
今日も人がひっきりなしに詰め掛けていた。
この街のモラルである彼は、あらゆる権限を越えた位置にいた。
今の署長も、彼には何もいえない。
引退まであと2年。ここでダディのご機嫌を損ね免職にはなりたく
ないのだろう。そんな過去を持つ男が署長だった。

「情報屋からの目撃情報集めましたんで、目を通しといてください」
「正確度は?」
「まぁ、お任せします」

「3番通りのルールティンが銃売買のリストを送ってきました」
「そこにおいて置いてくれ。後でチェックしてリストアップする」

「イーグルワンのパブの一件ですが・・・」
「聞きたくない。ゴミ箱に捨てておけ。あいつには始末書書けといっておけ」

「FBIの捜査官がいらしてますが、こちらに・・・」
「署長のところに。給料分の仕事をさせないといかんだろう?」

「ただいま戻りました」
「・・・いい面になったな。ロペス」
「お陰様で」

ジェニファーは少しやつれた風貌で、にこりと笑った。

「終わったのか?」
「大方は。LAのSWATの隊員が一人いるんですが、上の妨害で会えていません」
「なるほど。手が打てるようなら段取りしてみよう」

疲れた女と、疲れを知らない男はしばし沈黙のまま、対峙した。

「いえ、結構です。私はチームに戻ります」
「・・・わかった。あのろくでなしどもをよく見張れ」
「また何かしたんですか?」
「考えたくもないな。もういい、いけ」
「はい」

パイプを燻らせ、椅子に座り込み背もたれに腰掛けたのは
日付が変わってからしばらくしてだった。
デスクの上はまだ未見の書類が山積みになっている。
飽きずに送られた梱包小包の爆弾はもう処理して、ゴミ箱に
突っ込まれている。
家族のフォトグラフは必ず見える場所に置いてある。
もう姓を替え、過去を消して暮らしている。
今は連絡も滅多には取らない。

アンタッチャブルとして生きる男の人生は、そんな犠牲を強いるものだった。
だがその風貌によぎった郷愁は一瞬だった。
彼は鉄の男だった。彼は自分の信念に疑問を抱いていない。
ならそれでいいのだ。まだ書類は山積みとなっている。
燻るパイプを咥えたまま、彼は身を起こした。さぁ仕事だ。

 Photo   Eagle-OneのP99

 Photo   Eagle-OneのUSPC

 Photo   パブのマスターのショットガン

 Photo   ショットガンダディ、本部長ことジェフ警部

 Photo   ダディの趣味の喫煙具(パイプ)