Dyson's story 07"The Private Detective" Update!

【前回までのあらすじ】
元傭兵の銃器販売店店主...そして掃除屋(スイーパー)ダイソン。
腐れ縁の彼の今の相棒、市警のビル捜査官との最初の出会いは最悪だった。
それはある連続殺人事件がきっかけだった。
動機は違えども、犯人の逮捕に二人は協力して捜査に当たる。




−『私立探偵』
俺が差し出した名刺の肩書きを、女は最初胡散臭そうに何度も見た。

この仕事を始めてから受けた依頼は3ヶ月でたったの5件。
内3件はペット探しで、もう2件は浮気調査。

前職で蓄えた貯蓄は、この街で楽に暮らしていけるほど多くは無い。
かといって、すぐにパン屋を始められるような器用さも持ち合わせていない。
ではなぜ探偵か。子供の頃にテレビで見た、以上の理由が思い当たらない。

−時計屋ならできたかもしれない。

女が話を切り出すか席を立つまでの間、取り出した煙草に火をつけながらぼんやりと
そんなことを考えていた。

最初は偶然だった。細かい物を組み立ててばらすのが得意。ただそれだけだった。
いつの間にかそれが本業となり、俺は特別な『時計』を組み、『時計』をばらすことが仕事になっていった。

「貴方にお願いします」

思考は意外な言葉で突然遮られた。

「…まだ何をするのかも聞いていないんだが」

こちらの問いには答えず、女は鞄から一枚の写真を取り出す。

「私の幼い頃からの友人です。2週間前に…死にました」

「…」

「私と会った帰り道、至近距離から拳銃で撃たれて」

この場末のカフェには似合わない、小奇麗な服装をした女は目を伏せることもせずにそう言った。

「お金なら出します。彼女を殺した犯人を…捕まえてください」

「そういうのは警察に言ったほうがいいんじゃないのか?」

「捕まえて、私のところに連れてきてください」


数分後。
カフェを出て歩く俺のポケットには、100ドル札が百枚束になって渡されていた。

−このまま逃げるとは考えないのか?

一度そう考えてみた。が、違う。
もしそんなことをしたら、自分もまた追われる側の人間になるということだ。
この世の中は自由経済・資本主義。世の中が腐れば腐るほど、金の力は偉大だ。

今俺がこうしているのも、その力に踊らされた結果だ。
かつてパブで知り合った仲間と冗談半分で始めた頃は、皆そのことを考えること自体が楽しみだった。
酒の肴に盛り上がっていたのが、実際にやってみようという話になるまで3ヶ月。
実行するまでに1年。結果は…成功だった。
回を重ねるごとに手段も巧妙化し、俺の作る『時計』の質も上がっていった。

2年も立つとその分野ではそれなりに有名になっていた。俺についた名は『ボマー』。
俺の作った『時計』は爆薬つきだった。
俺たちのターゲットは叩けば埃の出るような資産家のみ。しかも要求金額は現実的。
相手が要求に従うのであれば、一切危害は与えない。
そのため事が公になることは無かった。義賊を気取って稼いだ金は自分たちと貧しい仲間のアルコール代に消えることも多かった。

リーダーを務めていた男が組織にはいることを宣言したとき、誰かが止めるべきだった。
組織に入って半年で、俺たちは初めて人を傷つけた。もう後には引けなかった。
そこから先は思い出したくも無い。唯一幸運だったことは組織の誰も俺の顔を知らなかったこと。
そして顔を知っている仲間たちが全員残らず死んだこと。

狭い路地に差し掛かったところで、人気が途絶えた。が、視線を感じる。
金と反対側のポケットに無造作に放り込まれたコルトの380オートに手を伸ばす…

「やめておけ。狙いはついている。お前が銃を構えるまでに少なくとも10回はお前を殺すことができる」

「…どうかな?」

そのとき既に俺の手の中では小型のフラッシュ・バンのピンが抜かれていた。

<バンッ!! −−−−−−!!!>

小型だが一瞬強力な目くらましになる。タイミングは完璧。声と反対に向かって飛ぶ。

「…ッ!!」

紙一重だった。信じられないことに相手は閃光を浴びながら、半呼吸前に自分がいた
位置に正確な射撃を繰り出してきた。

物陰から銃だけを出して応戦する。 …が、痛みとともにその銃が弾き飛ばされる!

−銃を狙った!?

すぐさま足首に固定されているバックアップ…デリンジャーに手を伸ばす。
気配を感じてその方向に銃口を向けるが、既に俺のこめかみに銃口が突きつけられていた。

「その銃は……違うな」

キーンと耳鳴りがなる中で、相手の声がずいぶん遠くに聞こえた。
耳鳴りが収まる頃、相手は銃を納める。

「はじめましての挨拶にしちゃ、随分乱暴じゃねぇか?」

「すまなかったな。人違いだった」

ジョークにしちゃ最悪の部類だ。 
「お前は…誰だ?」
「…この街に店を構える銃職人だ」
「ガン・スミスが何で追い剥ぎまがいのことをする?」

しばらくの間がある。話してよいものか迷っているのだろうか。

「…探し物をしている」
「…?」
「ここ数週間連続して起きている通り魔殺人に使われているのは、俺がカスタムした銃だ。
 最初の犠牲者はその銃を売ったうちの常連客。黙って見過ごすわけにはいかなくてな」

そう言いながら男は銃を収める。年のころは30代前半。自分よりいくつか年下だろうか。

「数週間前から…? ひょっとして、3日ごとにおきている女を狙った連続殺人か?」
「…そうだ」
「はっ、参ったね。恐らく…俺が追っている奴も、お前が探している銃を持った糞野郎だ」
「…追っている?」

懐から煙草を取り出し、火をつける。

「俺はビル・マクウェル。私立探偵だ。どうだ?ここはひとつ協力し合うってのは?」
男は訝しげにこちらを見る。
「…協力するメリットが見えないが」

大げさなため息交じりの紫煙とともに、俺はグッドアイディアを披露する。

「お宅は自分の銃をこれ以上犯罪に使わせたくない。俺は犯人をとっ捕まえて依頼主
 から報酬を貰いたい。お互いの利益は一致しているはずだぜ?探すなら一人よか
 二人のほうがいいに決まってるしな」

俺がその一本を吸い終わるまでじっくり考えて、男は答えた。

「いいだろう。俺はダイソン。この先のガンショップのオーナーだ」
「よろしくな、ダイソン」


握手は無い。お互いのすべてを晒したわけでは当然ない。
こいつはただのガン・スミスじゃない。その道のプロだ。間違いなく。
その気になれば本当に俺は10回以上死んでいた。そんな腕がありながらこいつからは
どす黒い殺気が感じられない。それが不思議だった。

奴が協力をOKしたのも不思議だった。普通こういったタイプは一匹狼を気取りたがる。

−ハッ! 面白くなってきやがった

俺たちは互いの持つ情報を交換するため、地元で有名な場末のパブへと向かった。

二人が出会ったその日の晩、やはり事件は起こった。

「あぁ…そうか…わかった」
ダイソンの携帯電話に情報屋からの速報が入る。ダイソンは聞きながらその場所を復唱した。
現場はビルとダイソンが火線を交わした裏通りとは、メインストリートをはさんで反対側だった。

「当てが外れたな…南側のブロックか。ここから10分はかかるぞ」
アイドリング音の響くマスタングの運転席から、ビルがダイソンに声をかける。
「急いでくれ。まだ近くにいるかもしれない」
「了解、相棒(バディ)」

ホイルスピンをしながらMach1が走り出す。

「…しかし、なんでそんな奴に銃を売ったんだ?」

速度をほとんど落とすことなく交差点を曲がりながら、ビルが問いかける。
「俺が売った相手は…最初の犠牲者になった。それから野郎は俺の銃を使って犯罪を繰り返している」
「なるほどねェ…っと」
横道から飛び出した車を避けながら、なおもビルは続ける。
「ってこたぁ、常連さんの敵討ちって訳か。俺が殺されかけたのもそのせいって事だ」
「…」

車はさらに加速しながら、夜の街を駆け抜けていった。

「空振り、か」
車にもたれかかり、煙草に火をつけながらビルが言った。
結局現場には既に警察が入っており、周辺にも怪しい人物は見かけられなかった。
「そうでもないさ。随分遅くなったが、3日後には奴を押さえる」
「?」
「狩場は絞り込まれた、って事だ」


3日後、二人はとある裏通りで張り込みをしていた。
連続する事件の発生場所にほとんど規則性は無かったが、同じ場所で2度起きてはいない。

消去法で狭まったエリアから、もっとも可能性の高いエリアを割り出す。
割り出しはダイソンが行ったが、ビルが見ても確かにそこは妥当な場所だった。

<…バンッ>

少し離れた場所で銃声が聞こえる。
目を合わせる間も無く、ビルが車を出す。
角を3つほど曲がった場所で、道の先に誰か倒れているのが目に入った。

「ダイソンッ!」
狭い路地で巧みに助手席側を前方に向けながら、フルブレーキをかける。
「ビル、お前は救急車を…」
車から飛び出したダイソンがそこまで口にしたところで、銃弾が二人を襲う。
ダイソンは咄嗟にボンネットに体を投げ出し、そのまま車を盾にできる位置に滑り込む。
運転席から出たビルがはすぐさまミニガバで応戦する。
(マジックターゲットへ向かって、ミニガバをダブルタップ!1マグ終わってマグ交換後、さらに射撃)
前方からは断続的に銃声が轟き、ビルの愛車にキスマークを刻んでいく。

「ったく、安い車じゃねぇんだからよ!」
「割のいい仕事なんだろ?後で直せよ」

窓ガラスが弾ける中、お互いに悪態をつきながら、相手の気配を探る。

「左前方のアパートメント。2階からだ」
「…この暗闇でよくわかるな? 早く片付けねぇと撃たれた奴が危ねぇぞ」

…生きてれば、の話だがな。とビルは付け加える。
「すぐ片付けるさ」
ダイソンは座席の後ろから大きなケースを引きずり出す。
中身は…レミントンM700。スナイパーライフルだった。
(同じくマジックターゲットに向けて、VSR−10のスコープの標準を合わせて…発射! その距離4メートル・泣)

「おい…ちょっとま…」
ダイソンはライフルを運転席を使ってホールドすると、助手席側のドア越しに標的に狙いを定める。
「…て!」 <ダァン!>
銃を取り出してから構えて打つまで、5秒とかかっていなかった。
それっきり、銃声は止む。

「安心しろ。殺しちゃいない」
「…ったく、おどろかすんじゃねぇよ」

幸い打たれた女性は一命を取り留めており、すぐに応急処置をして救急車を呼んだ。
アパートメントの2階テラスでは男が血を流して倒れていた。その表情には苦悶が浮かびながらも、口元は笑ったままだった。

「…ヤクか」
捜し求めていた銃を拾い上げながら、ダイソンはビルに視線を移す。
「そのようだな」
ビルはハンドカフを取り出し、男を後ろ手に拘束すると猿轡をかませる。
「市警が来ると面倒だ。こいつを連れてとっとと離れよう」
「だな」

遠くから鳴り響くサイレンを聞きながら、幾分風通しの良くなったマスタングが夜の街に消えていった。

数日後、ビルはダイソンのガンショップを訪ねた。
「ほれ。お前の分だ」
100ドル札の束を取り出して、カウンターに投げる。
「俺は金で仕事をしたつもりはない。お前が受けた依頼なら、お前が受け取れ」
「そんな事言うなよ。それに、『汝、欲するならば、まず与えよ』だ」
「?」
「これからも折に触れ、よろしく頼むぜ? パートナーシップって奴さ」

ダイソンは思わずため息をこぼす。
「…断る」
「なんでさ?お前さんほどの腕があれば、その筋でも十分やっていけるんじゃないのか?」
「…俺は面倒ごとが嫌いなんだ。幸いアンタのおかげで今回の面倒ごとは片付いた。これでキレイサッパリ、バイバイだ」


「…そうかい。伝説の『血濡れの鷹』は引退したって事か」

瞬間、店内が殺気に包まれる。
「『好奇心、猫を殺す』ってか。悪かったよ。この間の狙撃の腕があまりにも凄かったんでね。調べちまった」
「…調べて簡単にわかる類の事ではない筈だが」
「調査料は報酬から引いてある。確かに安くは無かったな」

暫くの沈黙の後、やれやれとため息をついてダイソンが切り出す。
「とにかくこの話はここまでだ。俺は静かにここで店を営む。放っておいてくれ」
ビルは肩をすくめてそれに答える。
「そういえばこの間の男はその後どうした?」
「依頼主に引き渡したよ。依頼主の『恋人』が殺されたらしくてね。この後は『死ぬよりつらい目に遭う』そうだ」
「女は恐いな」
「同感だ」

潮時だった。
「また来るぜ」
「あぁ。仕事に困ったら市警の本部長を訪ねるといい。お前の腕ならすぐに雇ってくれるだろう」
「…おれも叩きゃ埃がたんまり出るんだぜ?」
「この街では皆過去には興味が無い。必要なのは今と未来だけだ」

手をふらふらと振りながら、ビルは店を出て行った。

−ビル・マクウェルか。変わった奴だ。

−ダイソン・ホークアイか。悪くねぇな。

ビルはこの後何件かの依頼をこなした後、現場で遭遇した本部長にスカウトされ、市警に入る。
ビルは関わりを拒否し続けるダイソンに幾度となく絡み続け、ダイソンは最終的に掃除屋として共に戦うこととなる。

 Photo   ダイソンのスナイパーライフル

 Photo   ダイソンのUSPとGlock18

 Photo   ダイソンの護身用デリンジャー

 Photo  ダイソンのM1100

 Photo  ビルのミニガバメント

 Photo   ビルのM19

 Photo  DJのG36C

 Photo  ビルのマスタング

 Photo  ビルのマスタング