Dyson's story 03 "Wiseman" 

【前回までのあらすじ】
元傭兵の掃除屋(スイーパー)ダイソンの支援の元、篭城する銀行強盗を排除したビル捜査官。
しかし容疑者が死亡した為に彼らの違法銃器がどのように入手されたかの情報は得られなかった。
そして違法銃器販売の容疑者として疑われたのは意外にもダイソンだった。




立てこもり事件から2週間。
警察は銃器の出所を中心に調査を進めていたが、一向に進展は見られなかった。
犯人は全員射殺。一般市民の犠牲を払わずに済んだのはよかったが、できるならば生きたまま捕らえたかったところだ。

「おーい!ビル!ちょっと来い!」

課長からのお呼びがかかる。この声のトーンはあまり良い話では無さそうだ。

「なんでしょうか。課長」

「こいつを洗ってくれ」

「…こいつは…」

『で、俺の所に来たってわけか』

「洗え、って言われたもんでね」

一時間後、ビルはダイソンのガンショップにいた。
テーブルの上には一枚の写真。課長から渡された写真はダイソンのものだった。
…かなり若い。ダイソンが傭兵業を行っていた頃のものだろうか。

『仕事を手伝わせた上に今度は容疑者扱いか?いい加減にしてくれよ』

不快感を隠さずに、ダイソンが言う。

「コーヒーでも1杯飲んだらすぐに出て行くよ。ただね、市警も手詰まり感が出ていてねぇ。何かしら手がかりがないと、またくる事になるかもなぁ」

『2度とくるな。今すぐ出て行け。…と言っても、今日の夕方にはまた来るんだろ?』

「かもな」

火のついていないタバコの端を噛みながら、ビルはにや〜っと笑う。

『いくらかかるか分からんぞ。昔のツテをあたってみるが』

「ありゃ?案外素直じゃないの?」

『…少し興味がある。ただそれだけだ。夕方にまた出直して来い』

ビルがひらひらと手を振りながら店を出て行くと、ダイソンは一つため息をついた。

―(ワイズマン。また世話になるのか)


同日夕刻。

ダイソンとビルは市内の小洒落たオフィスビルの中にいた。

「イヤッハッハ〜、悪ィネ〜、手土産まで持たせちゃってェ〜」

部屋には騒々しい音楽が絶え間なく流れている。部屋には首を90度ひねって見ればアートと取れなくも無い造形物であふれていた。人の体のようなもの、やたら刺々しいもの、そして床にはそこかしこにチューブのようなものが這っている。
天井から吊られたモニターでは、終始悩ましい姿の女性がダンスのようなものを踊っていた。

その中で男はダイソンが持ってきたピーナッツバーをガツガツとむさぼっている。
ドレットヘアにサングラスの容姿は終始陽気な笑顔に見えるが、ダイソンもビルもその奥の瞳が自分たちを品定めしていることに気づいていた。

『…DJ。ワイズマンから用件は聞いていると思うが?』

「ハッ!もう調べてあるヨッ!せっかちだねェ君は〜」

DJと呼ばれた男が座っていたワークチェアの向きをくるりと変えると、キーボードを軽いタッチでたたき出した。

「これを見なヨ」

「これは…2週間前の事件の映像か? …しかも狙撃現場の? こんなものが流出しているのか?」

『…別に驚くほどのことは無いだろう。今はどんな情報でもネットに流れる時代だ』

DJはフンと鼻を鳴らし、さらにキーをたたく。

『…これは、この事件に関する掲示板か。 …会員制?』

「ソウ。非合法なやりとりを公然と行うための、特別なケイジバンってやつだヨ。ここに書き込んでいるコイツのところ、見てみナ」

<gest:今回の一件であらゆる武器の調達が可能であることは分かった>

<Mr.W:もっと詳しい情報に興味があれば、私のアドレスまで連絡を>

「<Mr.W>?」

「今回はコイツのアドレスまで提供するヨ。彼女からの依頼は断れないけど、必要以上に教える義理は無いからネ」

『十分だ。また来るかもしれんが…』

「その時のピーナッツバーは、ジャムの入ったヤツがいいかナ。ストロベリーの」

『覚えておこう』

「…夢に出そうだ」

建物を出ると、ビルはたまりかねた様にタバコに火をつけた。

「なんなんだ? あの趣味は。全く理解ができん」

『趣味の志向と情報屋としての腕前は関係ないからな』

紫煙を空へ吐き出しながら、ビルはごもっとも、と答える。

「で、これからお前はどうする?」

『今回の情報の対価を払わなければいけないんでな。ちょっとの間戻らない』

「そうか。俺はこの線を追うが…パソコンのできる奴が必要だな」

『そこまで面倒は見切れんよ。署内で探せ。ただし、絶対に信用できる奴を』

「…分かっている」


流出していた映像を撮るためには、警察の目を盗む必要がある。あれほど鮮明に押さえられていることから考えて、署内またはその近辺に協力者がいたと考えるのが自然だ。


ダイソンとビルはその場で別れた。


<とある男の手助けしてほしいの>

情報の対価として受けたワイズマンからの依頼。どうやら大きな組織の闘争に巻き込まれた男の保護が目的らしいが、裏にはもっと大きな意図があるのだろう。

だが、それを詮索してはいけない。それがこの街の一つのルール。

<鷲も手を焼いているみたいね。もしも出会うことがあったらよろしく伝えて>

肩にかけたケースからは、レミントンM700の重みが確かに伝わってくる。
懐からサングラスを取り出すと、それをかけながらダイソンは街の中に姿を消した。

 Photo   ダイソンのスナイパーライフル

 Photo   ダイソンのUSPとGlock18

 Photo   ダイソンの護身用デリンジャー

 Photo  ダイソンのM1100

 Photo  ビルのミニガバメント

 Photo   ビルのM19

 Photo  DJのG36C


 Photo  ビルのマスタング

 Photo  ビルのマスタング