Dyson's story 02 "Hostage Barricade Situation" 

【前回までのあらすじ】
元傭兵のダイソンはダウンタウンのガンショップで平穏な引退生活を送っていた。
しかし彼の過去を知る市警のビル捜査官からの依頼で、ミクロファクトリーの会長を狙撃者から救う仕事を引き受けたダイソン。
狙撃者を市警に代わり見事排除するダイソン。それは長く続く掃除屋(スイーパー)としての彼の初仕事となった。
数日後ダイソンのガンショップを再びビル捜査官が訪れる。




『毎度。』

ここはダウンタウンの外れにあるガンショップ。…俺の城だ。
とは言え、客は馴染みの常連客がほとんどなうえ、その数は極めて少ない。
結局毎月台所事情は火の車だが、しばらくは貯蓄を切り崩して生きていける。

今の俺にはこうして気の良い友人たちと過ごす時間が何物にもかえがたい貴重な物なのだ。
枯れた心に潤いを与えてくれる、貴重な時間。

…しかし、最近は招かざる客も来るようになった。

「よぅ!儲かってるかい?」

ビル・マクウェル。周りからは《給料泥棒》《昼行灯》などと呼ばれている市警の中年刑事だ。

『営業妨害だ。帰れ』

「おいおい、俺は客だよ?客。そのついでにちょ〜っとお願いがあってね?」

『店内は禁煙だ』

ビルの使う357.マグナム弾を用意しながら、内ポケットを探るビルに何度となくした注意を繰り返す。

へらへらした笑いを浮かべ、火の無い煙草をくわえたままビルは続けた。

「2日前から頑張ってる《モグラ》を叩きたいんだけどねぇ?』

『イースト・バンクの立て篭もりか』

最近ニュースで連日騒いでいる、銀行強盗だ。

『SWATの突入が失敗したか?』

「御名答」

報道はされていない。やはり権威は大切と言うことだろう。

「新人だらけのチームだったらしいがな」

『理由にはならんだろ』

「そりゃそうだ」

「上はやっきになってる。今週は本部長以下有力な面子は全て出払っててね。うちの課長なんざ息巻いちゃってるのよ。《この件は我々の手で解決するんだ!》だとさ」

『やめておけ。死人と怪我人が増えるだけだ』

「相変わらず遠慮と愛想が全く無いねぇ…」

皮肉は無視して、包んだ弾をビルに渡す。

『で?』

「バックアップを頼む。天下無敵のイーグル・ユニットならともかく、今のウチのチームじゃ万に一つも成功しない。
主力のSWATも《特殊任務》とやらでいつ戻るかわからん。
課長がどんな夢を見ようと勝手だが、とばっちりはごめんだからな」


弾の代金としては桁の違う金額を受け取る。

『いいだろう。後方支援でいいんだな?』

「あぁ。突入は明日の早朝5時だ。寝坊だけは勘弁してくれ?」

『あんたらが起きる前に片付けることもできるが?』

「…顔を立てたいのさ。サラリーマンなんでね」

ひらひらと手を振りながら、ビルは店から出ていく。

それを確認したあと、束になった札の間に挟まっていた明日の突入手順を確認する。

今日中に下見が必要だ。店を閉めて、現場へと向かおう

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ピピピピ…

デジタルアラームの音が俺を眠りの淵から現実へと引き戻した。

右腕のセイコーは4:40を示している。
首を鳴らし、肩の痺れを取る。狭い車内だが仮眠を取るには十分だ。
なによりここが一番落ち着く。

車から降りると予想を越えた寒さに身が竦む。

―ご苦労さんなこって。

ここからは早朝の突入に備えた市警のヤツらが良く見える。
俺は懐のリボルバーの感触を確かめながら、その輪の中に加わるべく足を進めた。

「いいか、ビル。お前さんは余計な事はするなよ?」

―まったく。開口一番これだ。

「わぁ〜かってますって。自分に割り当てられた仕事をちゃんとこなせばいいんでしょう?」

「そうだ。だが、今日のお前はギャラリーだ。ゆっくり見物をしていろ」

「なんですって?」

「聞こえなかったのか?お前は現場判断で無茶をし過ぎる。今回は絶対に失敗できんのだ。自重しろ」

―どうやらとことん信用されていないようだ。
 今までの俺の輝かしい戦歴は、彼らの目にはさぞかし危険に映るらしい。

「…はいはい。分かりましたよ。お望みとあらば今回は特等席で見物をさせてもらいますよ」

「残念に思うかも知れんが、今はそれが最大の支援だと思ってくれ」

「…こんな事ならポップコーンでも持って来れば良かったな」

そう言いながらいそいそとその場を立ち去る。

そのまま裏口に周ると物陰に隠れて数名の警官隊が控えていた。

「よ〜ぅ調子はどうだい?」

「なっ、 ちょっ、もう作戦開始の時間です!後方に下がっていて下さい、ビル!」

若い警官が行く先を遮る。

「そー硬い事言うなよ。大捕物は誰よりも一番近くで見ろってのがウチの婆さんの遺言でな」

「どんな遺言ですか!」

しばらく押し問答が続くが、生真面目な彼は律義にNoを繰り返す。

「いいじゃねぇか別に。ったくケチくせぇな…おっ?」

その時不意に建物から銃声が聞こえた。

「おっ始めやがったか!…じゃ、俺もお邪魔しますか」

目の前の警官たちをさっとすり抜け、裏口に駆け寄る。

「ビル!こちらの突入指示はまだ…第一貴方は今回後方支援でしょう!」

「言っただろ?《一番近くで見る》ってさ。今の俺はギャラリーなんだよ、悪いな」

裏口のドアは当然の如くロックされている。

《ダン! ダン!ダン!》

黙ったままのドアノブに3つほど鉛の弾をくれてやると、うんともすんとも言わなかったそいつも堪らず口を開いた。

中に人影はない。
後ろで騒ぎ立てる連中を尻目に、銀行内へ足を踏み入れる。

最初の曲がり角、身を隠したまま手鏡で先を伺う。

―いた。

そこには一介の銀行強盗には不似合いな重装備をした連中が辺りを警戒している姿が映っていた。

相手は二人。

呼吸を調えたあとタイミングを計り、半身をさらして引き金を引く。

《ダン! ダン!》

「ぐぁぁ!!」

一人の男はヘッドショットが決まり、即座に物言わぬ肉塊に変わった。
だがもう一人は肩に弾丸を受けながら反撃に転じる。

《ズガガガガガ!!》

フルオートの射線が一瞬前まで身体があった位置をなぎ払う。

しかし俺は既にその場所にはいない。斜め前方に身を投げ出し、デスクの影から一発。

《ダン!》

「ガッ…」

今度こそもう一人も沈黙する。
そのままの位置で空になった薬莢を取り出し、新たな6発の弾を込める。

慎重に先ほどの2人を確認するが、既に息絶えていた。
奴等が持っていた銃はP90とAK47。

―なるほど。確かに見本市だな。

前回SWATが突入に失敗した原因は、犯人たちが持つ異常なまでの火力だった。

当初少数を除いて開放された人質は彼らの武装が拳銃と一部ショットガンであると証言した。
しかし実際突入した彼らを待っていたのはアサルトライフルであり、最新鋭のPDWだった。

―やれやれ。

今2人倒して分かった事は、彼らが戦闘訓練を受けたプロでは無いと言う事だ。もしそうならこうたやすく侵入を許してはくれまい。

この調子では先に待ち受ける敵の獲物にRPGが無いとも限らない。
願わくば素人が室内でそんな物を使わない事を。
そんな事を考えながらさらに前進する。

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2階のオフィスはさながら戦場だった。デスクを盾に銃撃を続ける
強盗団は警官隊を入口付近に縛り付けていた。

「よぅ。苦戦してるみたいだな」

「…っ!?何故こんなところへ!?」

「今はそんなことを気にしている場合じゃねぇだろ。アメリカンヒーローを気取った馬鹿野郎供にどうやってこいつをぶち込むか。それだけが問題だろ?」

この間も銃声はやまない。

―人質は無事なのか?

ミラーを、かつてドアがあった場所へ滑り込ませる。

―1、2、3…4。人質…

僅かな時間でそこまで確認したが、次の瞬間には鏡は粉々になっていた。

問題は窓のブラインドが全て降りている事だ。これではSWATはもちろん《アイツ》も狙撃できまい。

―やぁれやれ。そんじゃまぁ、ちょっくら仕事とまいりますか。

体を少しずつ傾け室内を伺う。

―今だ。

《ダダン!ダダン!ダン・ダンッ!!》

一気に全弾を撃ち尽くす。すかさず次弾を装填。
排出した薬莢の落ちる渇いた音色が床に響き渡る。

「どこに向かって撃ってやがる!この**野郎が!!」

室内から嘲笑まじりの罵声が銃弾と共に帰ってくる。

が、次の瞬間。彼らには朝焼けの光と共に死神の接吻が届いた。

《パシッ!》

犯人の一人が糸の切れた操り人形のように倒れ込む。

《パシッ!パシッ!》

2人目、3人目。

残るは人質を抱えた最後の一人。
当然例外無く彼にもその瞬間は訪れる。

《パシッ!!》

ひと呼吸の後、室内で無事でいるのはいまや解放された人質のみだった。

それでも銃を構えたまま慎重にクリアリングを済ませると、ようやく呆然とする人質に上着をかけてやる。
その頃になってようやく現状把握のできた警官隊も動きだした。

後続の警官隊と入れ替わるように建物を出る。

路地に入り、煙草に火を点けようとマッチを探すが見当たらない。

―チッ。上着の中か…

火のないメンソールを咥えたまま他のポケットを探っていると、火の付いたZIPPOライターがすっと差し出される。

『大活躍だったじゃないか』

「どっちがだよ。…連中の獲物、見たか?」

『あぁ。是非とも仕入れ先を聞きたいね』

「なるほど。少なくともお前じゃないって事か」

肩を竦め、ダイソンはビルの吸う煙草の煙に目で追った。

『この一件、尾を引きそうだな』

「あぁ…」

上る朝日が二人の顔を照らし、心地よい眩しさに目を細める。

火を消して振り替えると、ダイソンは既に姿を消していた。

―またしばらくお前の世話になるかもしれねぇな…

ぐっとひと伸びすると、ビルは上司の小言が待つ詰所へ足を進めた。

 Photo   ダイソンのスナイパーライフル

 Photo   ダイソンのUSPとGlock18

 Photo   ダイソンの護身用デリンジャー

 Photo  ダイソンのM1100

 Photo  ビルのミニガバメント

 Photo   ビルのM19

 Photo  DJのG36C

 Photo  ビルのマスタング

 Photo  ビルのマスタング